英雄 | ナノ






 刃の風を感じると同時に、鈍い痛みが全身を襲った。
 嫌な熱さが腹部から込み上げてきたので、勢い任せに吐き出せば、地面に濁った血の模様がついた。大きく息を吸ったつもりが、ヒュウと変な音が響く。

「威勢がいいのは最初だけか?」
 対峙する笑顔は余裕綽々で癪に触る。

「うるせぇ」
 鉄の味を噛み殺しながら、低めに唸った。

「大人しく女を渡しときゃ命拾いしたのによ」
 余計な足枷があるから弱くなる、と告げる声はそれが真実だと一辺の疑いも持っていない。

「……違うだろ」
 犬夜叉が今背中に感じる重みは、昔の自分にはなかったものだ。

「逆だ。守るものがあるから強くなる」
 眉間に皺を寄せて睨み付けながら、ハッキリと告げる。
 間違ってはいない。絶対に。それを教えてくれたのは彼女だから……。

「とんでもねー馬鹿だ」
 乾いた笑い声が響いた。独りの笑いだ。独りだから強いと、こいつは本気で思ってる。

「その馬鹿さの前に死ぬんだ」
 すぐに次の一撃がくる。鉄砕牙を構える。まだ手が痺れている。また弾き飛ばされるかもしれない。
 それでも――。
 両手で強く握り直した時。

 ゴォ!!

 澄みきった風が正面を過る。
 淀んだ空気を浄化しながら、真っ直ぐ進む矢。

「犬夜叉!!」
 かごめの声が響く。
 一瞬で視界が開けた。

 強い響きの中にも、緊張感と少しの不安が隠った声。
 それは、今だから分かること。
 心配される思いも心配する思いも、教えられた。

「おれはかごめを守り抜く」
 その為に強くなる。
 歯を食い縛って、何度だって立ち上がる。

「犬夜叉――!!!」

 この声が名を呼ぶ限り。

 半分獣の、この耳に届く限り。







*****
へみさんリクエスト。『英雄』です。
ワクワクする曲ありがとうございます。文章力がついていかずすみませんorz(笑)

血塗れ犬夜叉大好き。
犬夜叉犬夜叉叫ぶかごめ大好き。
犬かごはお互いの名前叫びまくりで大好き。愛が伝わって来るよね。
少年漫画王道カップルはやっぱそうじゃなくっちゃ!!









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