私とあなたにできる事 | ナノ




 ゆらゆらと光が揺れている気がして。その光を確かめたいと思ったところで目が覚めた。

「……」
 少し離れた所で、小さくなった蝋燭の火が仄かに辺りを照らしている。光の正体はこれか、とまだあまりハッキリしない頭で理解する。

(ん?)
 まだ薄暗い中、蝋燭と同時に右手にも違和感を覚えた。しっかりと繋いである。くるりと右側に寝返りを打てば。

「……犬夜叉」
 手だけはしっかりと握って、気が抜けたように眠っている。
そうだ。昨日、ここで生きていくことを決めて。また犬夜叉やみんなに会って。寝る間も惜しくて蝋燭の火をつけたまま話し込んでいたら……いつの間にか寝てしまったようだ。
 ジーっと寝顔を眺めてみる。眉と眉の間によく寄っている皺はない。意外と長い睫毛に驚く。

(髪の色と眉毛の色は違うのよねー)
 意味もなく、久しぶりの彼をじっくり観察してみる。記憶と違わなかったり、今まで気付かなかった面に気付いたり。暫くあたたかい気持ちに浸っていたが、なかなか起きる気配がない。辺りが明るくなってきたので、外を見てみようとゆっくり手を離した。
 入口の簾を押し上げて外に出る。この動作が三年ぶりだ。現代との違いを改めて感じる。
 少し歩いて、それから胸一杯に戦国の空気を吸い込んだ。これから生きていく世界が、身体中染み渡るように。
 澄みきった風が静かに頬を掠めた時。

「かごめっ!!」
「犬夜叉」
 血相を変えた犬夜叉に腕を引かれた。

「……」
「……」
「何やってんだ」
「ちょっと…外の空気を吸おうと思って……」
 犬夜叉は気が抜けたようにため息をつき、それから少しバツが悪そうに手を離した。

「……心配した?」
「……」
「……寂しかった?」
「……」
「……言ってよ」
 前みたいに。堂々と。不満とかワガママとか並べて欲しい。

「私が居ないと……」
 ツライって。寂しくなるって。不安、とか。
 この三年間の分、犬夜叉の言葉が欲しい。隙間を埋める、言葉を。
 アイシテルとか流石に、そこまでは求めないから。
 犬夜叉の、素直な言葉が欲しい。

「素直に話してくれたことが嬉しいの、って前に言ったの覚えてる?ずっと前だけど……」
「あぁ」
 かごめが居ない三年間で、犬夜叉はかごめの色んな言葉を反芻した。何度も。何度も。もしかしたらかごめ自身よりも、かごめの言葉を覚えているのではないか。

「ずっと、変わってないよ」
 かごめの方から手を握る。弾かれたように犬夜叉は目線を合わせた。

「どこにも行かないわ。私の居場所はここだから」
 ずっと、犬夜叉の傍が私の居場所、と続ければ。
 かごめは力一杯抱き締められた。
 苦しいくらい強い力とは対照的に、彼の肩は小さく震えていた。





***
いつも二人でいようよ、
手を手に、目を見ていてよ。

夜声奈月ちゃんリク『あなたと私にできる事』。

あまーい素敵な曲が結婚式なイメージで。
やっぱり再会後かな?と思って。あとはエンドレスリピートで妄想の赴くままに…です。
可愛すぎるリクエストありがとうございました!!








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