節分 | ナノ
「鬼は〜外!!福は〜内!!」
楽しそうに豆を投げる少女。
「……」
眉間に皺を寄せて、少女の投げてくる豆を避ける鬼。
「何やってるんですか?」
障子を開けた手もそのまま、村正は二人に問い掛けた。
彼が疑問に思うのは、当然。部屋に入った途端、そんな光景を見せられたのだから。
「何って…今日は節分ですよ!」
豆を投げる手は休めず、少女は嬉しそうに応えた。
「……」
豆まみれの漢は無言でため息をつく。
「ゆやさん…」
村正は笑いを堪えながら少女に返した。
「節分の意味や謂れをご存じですか?」
問われた少女はキョトンとする。
「鬼に豆を投げて、歳の数だけ豆を食べる日じゃないんですか?」
幼い頃、鬼のお面を被った兄に豆を投げ、そんなふうに節分の日は過ごした。
「まぁ…そうですが…」
堪えきれなくなった笑みを浮かべながら村正は説明する。
「節分は元来、魔除けの意味で執り行われていたんです」
「魔除け…」
「今のように『鬼は外、福は内』と言いながら、外に豆を投げるんですよ」
「じゃあ、鬼に豆を投げるのは…?」
「子供が喜ぶから、そうする所も多いようです」
「子供が喜ぶから…」
村正の応えを繰り返し、恥ずかしくなったのか、少女は少し頬を染めて俯く。
だが、鬼はそれを見過ごさなかった。
「ガキ」
ニヤリ、と嘲笑いながら呟く。
「…うるさい!!」
節分の意味なんて関係なく、結局鬼は少女の投げる豆から避けなければならないのだった。
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小説とも言えない小話。こんな感じの短いの好き(笑)