ねぇ、手繋いで? | ナノ
かごめが熱を出した。
妖怪退治から帰ると、「おかえり。」と真っ赤な顔で言っていきなりぶっ倒れるから、犬夜叉は心臓が止まるかと思った。
「夏風邪じゃな。ゆっくり休めば直に治る。」
全速力で楓の所へ運べば、のんびりとそう言われた。
「わしの所にしばらくおるか?」
「大丈夫。楓ばぁちゃんやりんちゃんに移しちゃったら悪いし……。」
「亭主殿なら流行り病には負けんな。犬夜叉、ちゃんと休ませるのじゃぞ」
何かあったらすぐに来い、と言って、楓は薬草と風邪に効きそうな食事を見繕って持たせた。
「ごめんね、犬夜叉。ご飯作って待ってようと思ってたのに。」
「気にすんな。ゆっくり休め。」
「うん。……ありがとう。」
布団で顔を半分隠しながら、本当に申し訳なさそうに言う。そんなかごめに、犬夜叉は何か出来ないかと思案する。が、何も思い付かない自分に苛立ちだけが募る。そうなると、体が自然と部屋の中をウロウロしそうになって……でもそれは多分かごめの邪魔だから耐えろ、と自分に言い聞かせる。
「犬夜叉、」
「なんだ!?」
何だってする。
「ねぇ、手繋いで?」
「へ?」
火照った顔で控えめに頼んでくるから、犬夜叉は面食らった。
「ダメ?」
「いや。……そんなことでいいのか?」
問い返せば、いつもより弱々しく微笑んだ。
布団から差し出された手を握る。普段よりあたたかい。
「犬夜叉の手、今日はひんやりしてるね。」
「お前が熱いんだ。」
「そっか。そうだよね……。」
頷くかごめの手をギュッと握り返せば、安心したように眠りについた。
「早く良くなれ、かごめ。」
じゃないとおれの身がもたねぇ、と熱い指を絡ませながら、犬夜叉は囁いた。
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『ねぇ、手繋いで?』:夜声奈月ちゃん