かごめに触るな! | ナノ
「どうした……?声も出ないか?」
ずっと無視していた。
「犬夜叉は来ない。」
話したくなかった。
「来ない。」
それでも目の前の男はしつこく声を掛けてくる。
「奴は桔梗の所だ。」
聞きたくないことばかり。
「あんたがそう仕向けたんでしょ!」
そのねちっこさにうんざりして、投げやりに返事をした。
「そうだ。辛いか?」
反応を示した私に、奈落は陰湿な笑顔を浮かべた。
「辛いだろう。醜い嫉妬の心は。」
私の顎を掴んでクイと上を向かせる。いきなり気道が変わって、息が苦しい。
「イイ顔だ。」
桔梗と犬夜叉に嫉妬する顔が?私が犬夜叉に見せたくないこの顔が?
「いっそ清々しささえ覚える。」
「え……?」
そう呟いた奈落の声が妙に静かで。『清々しい』って言葉が彼の口から出てきたことも意外で。私は一瞬言葉を失った。
「憎しみに身を委ねればいい。」
「奈落……。あんたは素直に妬くことすら出来ないのね。」
「妬く?素直?……わしが?」
上機嫌だった声音が地を這うような低さに変わる。もしかして地雷踏んじゃった?
「笑わせるな。」
「きゃ!」
冷たい手に腰を引き寄せられた。
「今頃、桔梗と奴はどうしていると思う?」
考えたくない。
「そんな時にわしがお前をものにしたら……どんな顔をするか。何より見物だな。」
ククク、と冷えた笑い声が響く。
身の毛もよだつような思いってこのことだ。それだけ悍ましくて、寒気がした。
だけど気持ちで負けたくない。絶対に、屈したくない。
目の前の奈落を睨み付けたその時。
「んなこと死んでもさせねぇ。」
私を包んだのは、よく知っている……力強い腕。存在を確かめるよりも先に、無条件で身を委ねてしまう。
「かごめに触るな!」
鉄砕牙を片手に、私を抱き寄せて奈落から引き離した犬夜叉の眼は、焔のような怒りに揺れていた。
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へみさんリクエストの『かごめに触るな!』です!
ヒーローらしく登場を目指したんですが、私にはレベルが高かったみたいです。(笑)
嫉妬に身を委ねたりせず、犬夜叉に身を委ねるかごめちゃんが好きです。もちろんヤキモチは妬くけど。
奈落初めて書きました!奈落さん書くの結構楽しい!
素敵なリクエストありがとうございました〜!