もうちょっと、肩貸しててくんねーか | ナノ




「ないなぁ。場所が違うのかな?」
 かごめは楓に言われた薬草を探しに来ていた。
 妖怪退治の依頼がなかったので、犬夜叉も一緒だ。最近村から少し遠い所での依頼が続いていたので、二人でゆっくり過ごすのは久しぶりだった。
「移動してみる?」
 しばらく座り込んで草むらを探していたが、目当ての薬草はなかなか見つからない。だから、隣に座る犬夜叉に意見を求めた。
「犬夜叉?」
 先程からやけに静かだ。不思議に思って呼び掛けると、ストンと肩に重みが落ちてきた。耳元で響いたのは、スースーと気持ち良さそうな寝息。
 (寝てる……。)
 静かなわけだ。確かにこの天気は眠気を誘う。
 かごめは犬夜叉を起こさないように空を見上げた。群青色に澄みきった空がやけに眩しい。心地よい風に靡いた髪が、頬を擽る。
 しばらく空を眺めていると。
「ん……。」
「あ、起こしちゃった?」
 肩の重みが軽くなった。
「……悪い。」
「何で謝るの?」
 私は少し肩を貸しただけ、と笑いながら囁く。
「……もうちょっと、肩貸しててくんねーか」
 かごめの笑顔に安心したのか、まだ夢見心地な表情で言う。
「うん。」
 言われなくてもそうするつもりだった。かごめが頷くと、また肩に頭を預けてくる。すぐにまた寝息が聞こえた。
(そういえば前にもこんなことあったな……。)
 参考書を読むかごめの横で犬夜叉が寝てしまった時。
 ドキドキした。落ち着かなかった。
 今も、もちろんドキドキしている。
(でも、あの頃みたいな動揺するドキドキじゃなくて。近くて……この距離感が落ち着くみたい)
 何より犬夜叉の反応が違う。
 あの時は起きた途端真っ赤になって離れた。
 それが、またすぐに寝息をたてている。
(いつの間にかこんなに近付いてたんだね。)
 そう実感すると嬉しくて、もっと近付きたくて、隣の彼を起こさないように、かごめはこっそり手を繋いだ。



*****
夜声奈月ちゃんリクエストで『もうちょっと、肩貸しててくんねーか』でした。
今度は犬夜叉がかごめの重みで起きて、いつの間にか握られてる手にほっこりするターン。






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