私には犬夜叉しかいないの | ナノ




『誰がお前を護る?おれしかいねぇじゃねぇか!』
 暗闇の中響いた声に、ドクンと心臓が大きく跳ねた。
 ぼんやりとした光に目を向ければ、犬夜叉と桔梗が抱き合っている。
 まただ。すぐにそう思った。
 これは夢だ。記憶だ。思い出だ。
 ずっと忘れられない……思い出だ。

「ねぇ、犬夜叉。記憶と思い出の違いって分かる?」
「はぁ?」
 しとしとと雨が降り注ぐ薄暗い朝。足場が悪いので、私達は古ぼけた山小屋で立ち往生していた。
「記憶と思い出ですか……確かに難しいですね」
「おら全然分からん」
 止まない雨空を眺めていた弥勒様と七宝ちゃんが、返事をしてくれる。
「記憶と思い出……。良いのが思い出で悪いのが記憶とか?」
 珊瑚ちゃんも退治道具の整理をしながら答えてくれた。
「考え方が女性的ですね」
 弥勒様がほう、と目を細める。
「ううん。嫌な思い出も楽しい記憶もあるよ」
 私は珊瑚ちゃんの答えをやんわり否定した。
「結局かごめはどう思ってんだ?」
 犬夜叉が私の表情を窺うように尋ねてくる。まだあんたの考え聞いてないわよ。って思ったけど言わない。
「思い出は全部記憶してるけどね、記憶は全部は思い出せないの」
 記憶はいつでも出てくるわけじゃなくて、いきなり堰を切ったように思い出すことがある。
「なるほど。一理ありますね」
「それも『じゅけんべんきょう』の一つ?」
「ううん、これは学校で習ったのとは別」
 珊瑚ちゃんの一言で私は勉強しなきゃ!と思い出し、リュックから参考書を取り出す。

 テスト中、これやったのに!って思うんだけど、なかなか思い出せない数学の公式が、テスト終了間際に浮かぶのはきっと記憶していたから。

 逆に言えば――
 記憶は忘れることが出来るけど、思い出は忘れることが出来ない。

 強まったり弱まったりする雨音を聴きながら、私は明け方の夢を思い出す。

 桔梗に犬夜叉しかいないように。
 私にも犬夜叉しかいないの。

 それに気付いてる?
 気付いてない?

 一緒に居るって決めたのは私。

 桔梗と私、どちらか選ばれたら私は勝てない。
 同じ土俵にすら上がれない。

 ……生きているから。

 だからただ、信じたい。

 犬夜叉にも桔梗しかいない、じゃなくて。
 私も少しは……どこかで少しは必要とされてるって。





*****
きらりんさんリクエスト、『私には犬夜叉しかいないの』。
かごめちゃんの犬夜叉への台詞って難しいですね…普段ワガママ言わないから特に。
私がかごめちゃんならあのシーンはやっぱり暫く夢にだって出てきそうな気がして…。
きらりんさん、すみません。何が書きたかったかよく分からなくなりました。ホントすみません!
桔梗もかごめも必要だったんじゃないかな…って、誰もが知ってる二股ですね!

アニメ一期の最終回にあたる鬼の腹の中の話好きです。かごめちゃんが、嬉しかったって。地念児の時も嬉しいって言ってたけど……かごめちゃんが嬉しい話は私も嬉しいです。
相手を知れると嬉しい。相手に必要とされると嬉しい。恋ですね。犬かごぉぉぉ。








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