双頭の猟犬
追いかけて⇔追いかけて。


「…Mr.1の匂いもする」
「…Mr.2の匂いもする」

脱獄囚の集団に紛れて、時折懐かしい匂いを感じ取る。

雪原を抜けると、石壁が真っ赤な炎の光に照らされる、熱気と蒸気に満ちたフロアに出た。
時折爆音や悲鳴が響いているが、何が起きているのかは興味無い。
あの人がいるかどうか。二匹の目的はそれだけだ。
走る毎に、騒ぎに近付いて行く。
衝突の音、崩れる石壁、墜ちる橋、飛び散る血、倒れる人間の山。


「近い、ね」
「近い、よ」

葉巻の匂いを強く感じる様になって来た。先程から、砂が流れる音も聞こえている。
間違いない。あの人がいる、と確信する。
それも、もう、すぐ近くに。
人間が多過ぎて見付けられないが、進む先、直線上に、求める人がいるのがわかる。
目で見えなくても、鼻で、耳で、その存在を感じられる。

「ん?何だお前ら…」
「速っ!?」

囚人も、看守も、変なのも。
全てを躱し、追い越し、まっすぐに目指す。
邪魔。邪魔。全てが邪魔。
あの人は移動し続けている。急がなくては置いて行かれてしまうのだ。
熱気など気にしてはいられない。
見知らぬ人間など眼中に無い。
周りなど見ない。
階段を降りるのがもどかしい。

「「オーナーはどこ」」

早く、あの人に会いたい。

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