双頭の猟犬
足音がぴこぴこ。


「「オーナーの匂いがする…」」

葉巻と、香水と、砂の渇いた匂いが交ざりあった、あの人だけの匂いがする、と。
雪原で、二匹の狼が呟いた。
先程から、遠くが騒がしい。
上も、下も、囚人達が騒ついている。何かあったのか、と思いつつ、興味が無いので放っておいたが。
もしかして、あの人が檻の外に出たのかもしれない。それがあり得る事なのかどうかすら、二匹にはわからないけれど。

砂の国で引き離されて以来、初めてあの人の気配を感じるのは、何かあったという知らせなのかもしれない、と、二匹は考えた。

「「…行ってみる?」」

顔を見合せると、同時に走り出す。
向かう先は、いくつもの声が騒がしい方向だ。


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