何がどうしてこうなった。
ぅあ゙ーーーと、誰に届けるでもない、届ける気すらない感情を吐き捨てる。
本当に何がどうしてこうなったんだ。
「………俺、何かしたか?」
心当たりがないと言えば嘘になる。正直俺は色々叱られるであろうことはやらかしている。
そういう自覚もある。
だがしかし、本当にどうしてこうなった。さっきからこれしか言ってない。や、口には出してねぇか。
って、んなくだらねー事考えてる暇なんてねぇよ。どうにかしねぇと……
「何をやってるんだ青峰」
はぁと呆れたような溜息をつきながら俺の苦悩の原因である赤司が来た。他の奴らはいない。
「待たせて悪かったな。これは詫びだと思ってくれ」
自販で買ってきたのであろうコーラを俺に渡して、赤司は俺の目の前に座った。
俺は今赤司と二人きりだ。
部活後、急に部室でこのまま待機してろと言われた。後は……アレだ。赤司の言うことはゼッターイ!だから、な……はぁ……
「赤司ぃ……」
「ん?どうした」
「俺さ、なんで残されたんだよ」
ピクリと赤司の指先が動いた。
ヤベぇ……やっぱり俺、なんかやらかしてる。確実に。
なんだ?なにやった?思い出せ…思い出せ!!
「悪ぃ!!」
「………思い当たる節があったようだな」
「テツの事だろ?!アイツの口にバーガーめっちゃ突っ込んだこと!!でもさ、しょうがねぇじゃん!アイツ全然食わねぇんだもん!」
「……おい、何のことだ」
「れ?……じゃあ…っ!まさか、紫原が楽しみにしていたアイスを偶然見つけたからって食った後に、食堂に何故かあったタバスコで激辛水作って、代わりにそこに入れたことか?!あれ、3日ぐらい前のことだろ?!!」
「………青峰…」
「ちげぇ?!じゃあ、緑間か?緑マシーン太郎!とか叫びながらアイツの背に全力で飛び乗ったことか?」
「おい」
「それともあれか?!お前が大事にしてた将棋の駒を部室の掃除中にぶん投げて遊んで、幾つか無くしたことか!!?」
「アレはお前が原因か、青峰」
「……………………え?」
「覚悟はいいだろうな」
ギラッと赤司の赤い鋭い瞳が俺を睨み付ける。もしかしなくとも俺………
「墓穴を掘ったな、アホ峰」
はっ、と鼻で笑ってどこから取り出したのか解らない赤いはさみを振り上げる。
ああ、俺終わったな。
−−−−
−−
「いってぇよ」
「wwwwすwwwまwwwなwいwwwwwぶふぉwwっw」
「笑いすぎだろ、ったく」
現在目の前で蹲っている赤司。爆笑中である。爆笑……中で…ある……
どうしてこうなった。
説明してやろう。
はさみを振りかぶった赤司。俺は身の危険を感じて反射で後ろに逃げようとした。椅子に体重がかかる。転倒☆
赤 司 大 爆 笑 ←イマココ
「見事な、転け方だったぞ……ッ!すまんwwwwはwwあははwww」
そんなにつぼったのだろうか。
つーかこんなに笑ってる赤司初めて見たぞ……なんか、こうみると普通の……
「っは……ふぅ……すまない」
「お前もそういう風に笑うんだな」
「……お前は俺をなんだと思っているんだ」
「だってお前なにかとすげぇんだもん」
「だもんとか…可愛くないぞ…」
「うっせぇ!!」
「ははっ」
「ったく……」
呆れたように溜息をついてみせるが、赤司はまだ笑いを堪えているようだった。
珍しいよな、ほんと。
「まったく……少し説教でもしてやろうと思ったのに。内容が増えたな。後で謝りに行けよ」
「後で?!」
「早いにこしたことは無いだろう?それにしても、本当にいらないことを言いまくったな。さすがアホ峰だ」
「んだよアホ峰って!さっきも言ってただろ!!」
「アホな青峰だからアホ峰なんだろう」
有無を言わせない威圧感。こんな事にそれはねぇだろう…おい……
「俺はお前のテストが余りにも悪いから説教をしようとしたんだけだぞ?」
「あーーーーっそっちかぁ!!」
「はぁ……まったく……。お前はバスケに関しては認めざるを得ない才能がある癖に、どうして学習面ではこうなんだ」
「しょうがねぇだろ……」
「しょうがなくない!努力しろ!!」
机の上に置きっぱなしだった部誌で頭をはたかれる。
つか、俺赤司に認められてたんだな。なんか……嬉しいなおい…
「青峰、お前マゾだったのか」
「はぁ?!」
「はたかれてニヤニヤするな、キモチ悪いぞ」
「うっせぇよ!」
「俺がお前を認めてるかなんて愚問だろう?認めていなければこんなに手をかけてやらないさ」
「なんでわかんだよ。んでもってなんでお前はそんなに上から目線なんだよ」
「そんな俺ですらお前は認めているんだろう?」
ふっと柔らかい笑みを浮かべて俺をまっすぐみる赤司。
余裕たっぷり。確信持ってますよ!って感じを包み隠す様子はない。ほんとうにお前というヤツは……
「ったりめぇだろうが。俺だけじゃなくてテツ達だって、お前のこと認めてるよ」
ぶっきらぼうに言い放つと赤司は先ほどのように無邪気に笑ってみせた。
くっそハズイな…まあ、たまにはいいか……
いや、ずっとこんな日が続けばいいよな。
出来れば他のヤツも一緒に。
−−−−−−
これはキセキが対立する、丁度一年前の出来事
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