王妃の日記−番外編− | ナノ


 ◇こころ、零れて−1/5−
宵の刻、私の窓の真下はいつも黄色い声で溢れかえる。
夜間部を待つ女の子たちの歓声。
若葉の香りを孕んだ風が髪をいたづらに弄ぶ。
視界を遮る髪の毛の合間から、私の瞳は枢だけを見つめていた。

ねえ、枢。
溢れ返りそうなこの想いはどうしたらいいの?
このままじゃきっと、心から零れ出てしまう。
でも私は、ここから見つめることしかできなくて。

その時、一人で十数人の女の子を押さえ込んでいた優姫がその波間に飲まれてしまった。
小さな体が人波に揺れ、溺れてしまいそうになっている。
細い手が助けを求めるように空を彷徨って。

そんなあの子に気付いて、私がハッと息を呑むよりも早く、枢は素早く優姫の手を掴んで荒波から引き上げた。
助けてもらって顔を紅く染める優姫、そんなあの子を見て微笑む枢。
それをただ自室の窓から見ている私。

わかってるわ
わかってるの
私がいくら手を伸ばしても、貴方には届かないってことなんて。

奥底から滲み出た暗く黒いモノが、私の心に染みわたる。

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