◇冷たい林檎と貴方の手−1/3−
うっすらと目を開けると、そこには貴方がいた『……かな…め……?』
ひんやりとした彼の手が、私の額にそっと触れる。
「熱はだいぶ下がったようだね。理事長から連絡をもらって驚いたよ。……来れてよかった」
『……枢には言わないでって言ったのに。こんなこと、しょっちゅうなのよ?そのたびに無理して来てたら大変なことになっちゃう』
今は一翁の元にいる枢。
監視の目を盗んで来るのは難しいはずなのに……。
「そんなこと気にしないで。……それよりも、白亜。今まで何回理事長に口止めしてきたの?」
『……。』
うっかりと口を滑らせて熱が出るたび、倒れるたびに枢に秘密にしていたのがバレてしまった。
私のことを心配してくれているのだとわかっていても、怒った枢の目は、怖い。
「…白亜?」
有無を言わせないその声に、仕方なく私はおずおずと指を三本立てた。
「三回も?白亜、これからはちゃんと……」
首を横に振る私を見て、枢は言葉を止めた。
ここは正直に言おう……。
『……その……十倍……』
枢は額に手をやって、深く深くため息をついた。