◇Perfect sweet−1/1−
甘さ控えめの生クリームに映えるのは、チェリーソースの深い赤。ルビーみたいなグリオットは酸味が強くて果肉たっぷり。
その下にはチェリーソルベ、チェリーのジュレ、ブランマンジェ、そしてシロップ漬けのチェリー。
さくらんぼの蒸留酒、キルシュの香りが全体を包み込む。
背の高いグラスを彩る白と赤のコントラストに溜息。
柄の長いスプーンで掬って口に運べばうっとり。
「美味しそうに食べるね」
枢はダージリンを傾けながら、目の前の恋人の様子に満足そうに微笑んだ。
『だって美味しいんだもの』
白亜は夢見心地の表情で呟くように言った。
鮮やかで綺麗で、見ているだけでときめくのに、食べても美味しいなんてパフェってなんて素敵なんだろう。
『枢も食べる?』
白亜はそう言うと、チェリーソースのかかったブランマンジェとチェリーソルベを器用に掬い、スプーンを枢に向けた。
『あー……』
もちろん恋人からの"あーん"を枢が断るはずもなく。
スプーンに乗せられた甘い赤にではなく、軽く小首を傾げて自分を見詰める白亜にときめきながらその端正な唇を開いた。
『ん。――ふふ』
しかし、そのスプーンは枢の鼻先でUターンして持ち主の口の中へ。
『美味しい』
小悪魔めいた笑顔。
悪戯が成功した子供のような笑みは、だけどもたいそう艶めかしくもある。
少々呆気にとられた枢だが、しかしすぐさま開いた唇で弧を描いた。
その笑みに白亜が気づく隙も与えず、テーブルに乗り出してその頭を引き寄せる。
突然のキス。
『えっ……、ふ、……ん……んぁ……』
それもちゅっという軽いものなどではなく、舌を絡め取り吐息さえ吸い尽くすほどに深く深く。
白亜の口内に残されたパフェの甘さが無くなるまで堪能すると、枢はやっと唇を離した。
「ああ本当だ、美味しいね」
『……もうっ、』
白亜が涙目で睨むと、だってそう言う意味だったんだろう、と枢は妖艶に笑った。
(……俺らがいるって忘れてませんかね、玖蘭先輩)
(ちょっと零!!血薔薇の銃は下ろして!!)
(ああ錐生くん、いたんだ)
(最初からいますけど?)
(あら、零も食べる?はい、あー……って枢!もう、枢は今食べたでしょう?)
(君のあーんをもらっていいのは僕だけだよ)
※優姫と零も一緒の、四人でのカフェタイムでした。
−END−