王妃の日記−番外編− | ナノ


 ◇四代前の王の話−1/2−
その昔、己が血の繁栄を一心に願った男がいた。

男の父はその国の王であった。男は王子であった。
しかし男には兄がいた。
何一つ取り柄のない平凡な兄
父の死後、当然のごとくその兄が王位を継いだ。
知も武も器量も、すべてにおいて自分の方が優れているのに、たった一年遅く生まれたというだけで、男は王座に就けなかった。
国の一部の領地を与えられ、その領主としての地位に甘んずるしかなかった。

男は運命を恨んだ。

幼少より血の滲むような努力をしてきたのに何故!
自分の方が為政者として相応しいのに何故!
何故あの愚鈍な男が王なのだ!


男には二人の男児があった。
二人とも見目麗しく優秀な子どもたちだった。

男はその子たちを憐れんだ。
この先、一領主の子としての道を歩まねばならぬその子たちを。
どう足掻いても権力を掴めないであろうその子たちを。
そして、このままこの地に埋もれていくであろうその子孫を。

そう考えて、男は身震いした。
自分の血脈がこのまま廃れていくであろうことに恐れ慄いた。
それは男にとって、己の消滅と同等であるように思えた。

男には、道は一つしかないように思えた。
強い力が必要だった。
運命を変える、強い力が。

男は地下に幾日も籠り、古今東西のあらゆる書物を広げ、目当ての物を見つけ出した。

そしてある新月の晩、男は悪魔を呼び寄せた。

/

[ ⇒main]



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -