◇my diary−1/6−
それは七歳の誕生日のことだった。「お誕生日おめでとう、私の白亜」
『ありがとうございます。…ふふふ、もう今日五回目よ、お父さま。朝目覚めてすぐに一度、昼食の時に一度、パーティーが始まる前に一度、パーティーでもう一度』
「娘の誕生日は何度だって祝いたいものだよ。パーティーでの挨拶は素晴らしかった。あれは自分で考えたのかい?」
『じいやに少し手伝ってもらったの』
「ほとんど王女がご自分でお考えになった物ですよ、陛下」
「さすが私の娘だ!」
盛大な誕生日パーティーが終わった夜。
王城の一角にある私用リビングでの団欒の時間。
お父様は私を膝に乗せ、その隣には一条大臣が控えていた。
お母様と乳母が私たちを微笑みながら見つめていた。
「今日のパーティーにいらした各国の大使様や貴族のご当主方が、それはそれは姫様を褒めそやしておいででしたよ」
乳母は自分のことのように自慢げに言った。
いつも口うるさい彼女だが、基本的には私に甘い。
「十年もすれば我が姫は、国一番の美姫と謳われた母を越えるやもしれんな」
お父様もまた頬を弛ませながら言った。
お母様は、はにかみながら微笑んだ。
「もう、あなたったら」
「そうすれば君の時のように国中から求婚者が集うのだろうな、美冬?」
「嘘ばかり仰って。私に求婚して下さった殿方はあなたお一人でしたわ」
「それはそうだろう。私が他の者たちを退けたのだから」
「まあ…!」