◇私の部屋ができたわけ−1/1−
「優姫、白亜、錐生くん。キミ達は来週から高等部に上がって寮に入るわけだけど、風紀委員の特権として好きな部屋を選んでいいよ。理事長であるボクからの入学祝いさ!」
とある夜、満面の笑みで理事長は言った。
その姿は少々ウザいが、そのプレゼントは白亜たちにとっても喜ばしいものだった。
「俺は一人部屋がいい」
「えー、零は明るい人と一緒の部屋にしなよ。そしたら少しは影響されて「却下」」
無邪気な優姫の言葉を零は容赦なく遮った。
「はーい!私は白亜か頼ちゃんと同じ部屋がいいです!」
「うん、錐生くんと優姫の希望はオッケーだよ。白亜、キミは?」
最後まで黙っていた白亜に理事長は尋ねた。
『……私は、あの部屋がいいわ』
「――あんな部屋がいいのかい?」
白亜が希望した部屋は陽の寮の一番端。
何年も使われておらず、今は物置のようになっている。
「白亜、あそこは埃もすごいし身体に悪い」
零は心配するが、白亜は聞き入れない。
『どうしてもあの部屋がいいの。だって…』
「何の話をしてるの?」
「「『枢!』センパイ!」くん!」
突然の来訪者に驚く三名、
舌打ちする一名。
「いやー、白亜がね…」
理事長が説明すると枢は白亜に尋ねた。
「白亜、どうしてあの部屋がいいんだい?確かにあそこは広いけど、埃で身体を悪くするよ」
『枢、零と同じこと言ってるわ』
枢と零はお互いに身震いした。
よりによってコイツと同じことを言うなんて…!
『…あの部屋はね、陽の寮の中で唯一見えるの。月の寮の門が』
白亜の言葉に、四人はじっと耳を傾ける。
『優姫と零から、出待ちの警備には危ないから来なくていいって言われてるの。私は出たいんだけど…。でもね、あそこからなら頑張ってる二人の姿が見れるかなって思って。
それに、あの部屋からなら、例え会えなくても枢の姿が毎日見れるもの』
白亜のあまりにいじらしいその言葉に、四人のハートは射抜かれた。
「白亜っ!」
そういって優姫は白亜に抱きついた。
零は顔を赤くし、理事長は「なんていいこなんだー」とハンカチを濡らしている。
そして枢は
「わかったよ、白亜。三日待ってくれるかな。僕が準備するから」
『何の準備?』
「枢センパイっ 私も手伝います!!」
「枢くん、業者にはボクが連絡するよ!!」
「…俺も」
三日後、その部屋は天井から床まですべて作り替えられ、一流ホテルのスウィートルーム並みの豪華な部屋へと変貌していた。
−END−