◇無自覚な彼女−1/4−
文献を夢中で読み漁っていたら思わず寝過ごしてしまった。完全遮光のカーテンを閉め切った室内は吸血鬼の目に優しい暗さを保っているが、今は昼間。
時計はちょうど正午を差している。
何気なくロビーに降りると、そこには枢様と白亜様がいた。
『あら、英』
「お二人とも、こんな昼間にどうしたんですか」
『優姫と一緒にランチをしようと思って』
はりきって色々作りすぎちゃったわ、とピクニックバスケットを持った白亜様はにこやかに言った。
『じゃあ枢、私は優姫を呼んで来るから先に中庭に行っていて』
「僕も一緒に行くよ、白亜。君一人で校舎に行って何かあったら大変だからね」
天才美少年と称された僕とした事が、お二人の会話がよく理解できなかった。
やはり睡眠不足は駄目だな、頭の回転が鈍くなる。
――え、何だって!?
「え、ちょっと待ってください!お二人とも今からどちらに行こうとしてるんですか!?」
「『普通科の校舎に』」
枢様と白亜様は綺麗に声を合わせて言った。