王妃の日記−番外編− | ナノ


 ◇神鳴の夜は−1/5−
雨粒が窓を激しく打つ。
昼間はあんなに晴れていたというのに、夕暮れ頃から空には暗雲が垂れこめ、日が沈むと本降りになった。

「夜間部がお休みで良かったねー零。こんな日に見回りなんて大変だもん」

はいコーヒー、と優姫から熱い湖白色の液体の入ったマグカップを手渡される。
途端、目映い光線が窓の外を一瞬だけ照らし、間もなく地響きのような轟音が空間を揺らした。

あいつは大丈夫だろうかという不安は、すぐさま抱きしめてやりたいという衝動に変わり、次の瞬間には虚しく霧散した。

――あいつにはもう、抱き締めてくれる腕がある。

すでに理解し納得しきっていたはずの事実が、それでも燻り続けている零の心を締めつけた。

「白亜、大丈夫かなぁ」

優姫が窓の外を見やりながらそう零す。

「大丈夫だろ、玖蘭枢がいるんだ」

零はそっけない風にして独りごちるように返した。

「そうだよね。……でもなんだかちょっと淋しいな。ほら、白亜っていつも無理して強がってたじゃない?それに大抵のことは何でも自分でしちゃうから、私が白亜に出来ることって少なくて…。だから私、雷の日って実は嬉しかったんだぁ。その時だけは白亜が思いっきり頼ってくれたから。……でも、その役目はもう私じゃないんだもんね…」

ミルクをたっぷりと入れたマグカップの中身に視線を落として、優姫はぽつりと呟くように言った。
そんな優姫の言葉に、あの日抱きしめた白亜の香りが零の記憶を過った。

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