◇学園守護係の午前二時−1/3−
星々も眠る深夜。白亜は目を覚ました。時計を見ると午前二時。
『そろそろね…』
そう呟いて寝室を出た。
白亜の夜の眠りは浅い。
十年の時が経っても、吸血鬼だった頃の生活習慣はそう簡単に変わるものではない。
リビングの窓を開けると大きな雨粒が壁を叩きつけていた。
いつ頃から降り始めたのだろう。
この天気じゃ二人ともずぶ濡れに違いない。
白亜はバスルームに行き、バスタブにお湯を溜めた。
大きめのバスタオルを用意し、部屋を暖める。
紅茶を準備していると雨とは違ったものが窓を叩いた。
「白亜〜、濡れちゃったよ〜」
『今日は一段と大変だったでしょう?…ごめんね、何にも手伝えなくて…』
「…お前が来てたら一発で風邪ひく」
守護係のお仕事が終わるこの時間、優姫と零はいつもこの部屋を訪れる。
白亜の淹れたお茶を飲みながら過ごす夜の一時が疲れた二人の何よりの癒しだった。
白亜は雨ですっかり濡れてしまった二人にバスタオルを渡した。
石鹸の香りとふんわりとしたタオル地が二人を包み込む。
『優姫、零、お風呂に入ったら?寒いでしょう?』
「優姫、先に使えよ」
「いいの?ありがと、零。じゃあ先に使わせてもらうね」
『あ、優姫、新しいバスタオル、そこに出してるから』
「はーい」
『レディファーストなんて、零、紳士ね』
「そんなつもりじゃない」
そう言いながら、零は顔を背けた。
白亜からは見えないが、その両頬は少しだけ赤く染まっていた。