◇第十二罪:散らばったピースをはめるのは誰−1/6−
『はぁ……はぁ……はぁ……』…苦しい
…苦しい
『はぁ……はぁ……』
…息が
…できない
『はぁ……はぁ…っ、ごほっ、ごほっ、ごほっぅ…!』
激しく咳きこんだ途端、甘い香りが鼻を掠めた。
口元を押さえた手の平を見ると
――赤。
測定器で指先を挟むと中の紙は鮮やかなピンクに染まった。
予測よりも遥かに早く吸血鬼因子が覚醒し出している。
血が付くのも構わずに結果をノートに記録する。
限界が近付いていることを感じて自嘲した。
時は残酷に、たゆむことなく忍び寄る。
私の未来は二つだけ。
―――コンコン
誰かが来た。
すぐに洗面所に駆けこんで血を洗い流し、ノートを引き出しに隠す。
誰にも知られる訳にはいかない。
「…白亜、起きてる?」
この声は優姫。
『どうぞ、入って』
悟られないように必死に声をつくろった。