王妃の日記 | ナノ


 ◇第九罪:訪い人−1/6−
side 瑠佳

「大変なんだ!今夜ウチのお祖父様がここに来る!!」

陽が昇りきり皆が眠りについた月の寮。
朝の静けさに包まれた寮内に、突如響き渡る拓麻様の叫び声。
習慣である就寝前の読書の手を止めその声の在処へと向かった。
せっかく『王妃の日記』を読み耽っていたのに、神聖な時間を邪魔しないで欲しいわ。

「…副寮長がそこまで恐がる"お祖父様"って、あの人しかいないですよね」

声の在処である英と暁の部屋の前には、数人が集まっていた。

「そう…。『表の世界』ではありとあらゆる商取引でその名が絡まないことはないと言われるほどの企業――『一条グループ』を育て、『闇の世界』では吸血鬼の貴族の中でも筆頭の一族の長。一条麻遠、別名…"一翁"。『元老院』にも名を連ねる最古参の吸血鬼の一人…」

「恐るるに足らないわ」

あまりに恐々とその"お祖父様"のことを語る拓麻様を見て、つい口を挟んでしまった。
だって…

「『元老院』は確かに私たちの世界を統率する最高機関だけれど、私たちの『君主』じゃないわ」

そうでしょう?
"王妃様"…。

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