王妃の日記 | ナノ


 第八罪:軋み出す歯車−1/3−
私的居住区の客室へ行くと薄まった血の匂いがした。
シャワーの水音が室内に響く。
バスルームから出てきたのは

『零…』

「……白亜」

私を見た零は、すぐに目を逸らした。
濡れたままの灰銀の毛先から雫が滴る。

『零、風邪を引くわ』

私はタオルを取り出して零の髪を拭いた。

「なんで…」

『え…?』

「なんで、お前も優姫も、俺なんかに構うんだよ」

浅紫の瞳は床を見つめたまま。

「俺がさっき優姫に何をしたか…。気付いてるんだろ!?」

『…優姫が決めたことだから』

零は私の目を見た。

『それに私にとって、零も大切な人だから。零に苦しんでほしくないの。……生きてほしい』

零は再び俯いた。

あとはあなたが自分で決める番よ、零。
紅茶を淹れてテーブルに置き、私はそっと部屋を出た。

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