王妃の日記 | ナノ


 ◇終章:エピローグ−1/8−
三年後――――


「ああ!この光景をどんな言葉でどう表現したらいいの…!」

「私も行き詰まってます…。この黄昏時の情景ってどんな風に描けばいいんでしょう…」

「……優姫さんお願い、もう一回『日記』を開いてちょうだい」

「ダメですよ瑠佳さん、開くたびに私たちボロボロ泣いちゃうから、一日に一回までにしましょうって決めたじゃないですか」

「でもこの切なくも美しい瞬間を表す言葉がどうしても見つからないのよ…!」

「お城の扉の向こうに黄昏の空が広がって、湖白さんの銀の髪が風に揺れて……。夕暮れの赤?紫っぽい青?この空ってどんな色で塗ればいいんですか〜」

「それ貰ったわ!『開け放たれた扉の向こうには、黄昏色の空が広がっていました。薄茜から群青色に染まる中、風に揺れる銀の髪。それは帰ってきた王子様でした』…と。これで良いわ!……でもちょっと文章が硬すぎるかしら」


教室の外にまで賑やかな声が聞こえてくる。
軽くノックをして中に入ると、優姫と瑠佳が机にたくさんの資料を広げながら作業をしていた。

『まあ、賑やかだこと。ちょっとお邪魔するわね』

「白亜おねえさま!」

「白亜様!いえ、王妃陛下!」

突然訪れた私を見て、二人は驚きながら席を立った。
慌てて礼を取る瑠佳に直るよう伝える。

『瑠佳、学園ではそう畏まらないで。ちょっと顔を見に寄っただけだから』

「いえ、お忙しい御身ですのにお立ち寄りくださって嬉しいですわ。――英、白亜様がいらっしゃるなら先触れくらい出しなさい!仮にも王妃陛下の秘書官でしょう!」

瑠佳は私の後ろに控えた英を小声で咎めた。

「仮にもとはなんだ!僕は正式に白亜様の筆頭秘書官だ!……その、今日のご予定にはなかったんだが、ハンター協会に向かうまでにたまたま少し時間が空いてな、そしたら白亜様がどうしてもお前たちの顔が見たいと仰って…」

英は照れ隠しに、手元の書類に目を通しながら早口に答える。
この「たまたま少し空いた時間」は、最近なかなか優姫に会えずに落ち込んでいた私を気遣って、優秀な秘書官がスケジュールを調整して作ってくれたものだった。

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