◇第五罪:永遠の君は−1/12−
真夜中――優姫を起こさないように、そっとベッドを後にする。
制服に着替えて向かうのは理事長室。
昨夜届いた呼び出しの手紙。
こんな未明に呼び出すということは枢も来ているのだろう。
今話し合うべきことは、一つなのだから。
深呼吸をして扉をノックした。
『失礼します』
そう言って目を上げると、そこにはパジャマ姿の理事長と、案の定枢の姿があった。
「やぁ、白亜。枢くんもさっき来たところだよ。さぁ、二人とも座って座って」
枢とは何だか気まずくて、目も合わせられないままソファに腰掛けた。
「二人とも分ってるとは思うけど、呼び出したのは錐生くんのことなんだよねー。錐生くんは確かに……吸血鬼の本能に目覚めちゃったわけなんだけど、風紀委員としても、普通科には必要なんだよ。女の子二人にあの激務をさせるわけにもいかないしねー」
理事長はそこで言葉を区切り、枢の方を見た。
「……でも、また彼が人を襲ったらどうするんです?」
「もちろん対策は考えてるよ!これさっ」
ジャーン!という風に理事長は一つのブレスレットを取り出した。
『それは、ハンターの…』
吸血鬼を飼いならすための腕輪。
「そうだよ。急いで協会から取り寄せたんだけど、一個しか手に入らなくてねぇ。白亜か優姫のどちらかに付けてもらうことになるけど…」
『それなら優姫に付けて。私だったら大丈夫、いざとなったら自分の身くらい守れるわ』
そう言うと、枢が鋭い目つきで私を見た。
やっぱり怒っているのかしら、昨日のこと……。
「白亜、君は少し力を使っただけでもすぐ倒れてしまうだろう?そのたびに僕がどんな思いをしているか……わかってる?」
枢はじっと私の目を見据えた。
その紅い瞳は、すごく真剣で……。
そうだわ、怒っているんじゃない。心配してくれているんだわ。
『…ごめんなさい……』
小さな声で呟いた。
「そうだよ。白亜は無茶しすぎ」
めっと理事長は叱って見せる。
『それでも、腕輪は優姫に渡して。零といちばん一緒にいるのはあの子よ』
「確かにそうだね。それでいいかな、枢くん」
枢は私を見て黙ったまま。
『無茶はしないわ』
枢の瞳を見てはっきりと告げた。
「わかりました。錐生くんへの対策がこれだけなのは少し不足だとは思いますが……」
枢はしぶしぶ了承した。