王妃の日記 | ナノ


 ◇第十七罪:エゴイスト−1/6−
side 白亜

『……ごほ、…ごほっごほっ、ごほっごほっ……』

吐血が止まらない。
皮膚に浮かぶ内出血も広がるばかり。

閑の血を飲んでから、体内の吸血鬼因子が活性化していた。
目覚めたばかりの因子は人間の細胞を手当たり次第にに喰らっているのだろう。
ケース内の血液錠剤をすべて飲み込んだところで、やっと痛みは治まった。

『……これで誤魔化すのもそろそろ限界ね……』

だんだんと薬を飲む間隔が縮まってきている。
量も最初の三倍にまで増えていた。

『―――』

貴方の名前を叫びたい。
でも、私にそんな資格はない。
この道を選んだのは私自身なのだから……。

"To be, or not to be, that is the question."

有名な戯曲の一説が頭をよぎる。

―――生か、死か、それが疑問だ。
どちらが正しい生き方か―――

生か死か、なんて、ずっと昔に決めたこと。
自分の行く末を知った時に決めたこと。

それなのに
こんなにもこの科白に心が揺さ振られるのは、きっと私が迷っているから。
だけど、恋を失ってもなお枢のそばにいるなんて、そんなの無理。
それは死よりも辛いこと。

それでも……

私には断ち切ることのできない細い細い蜘蛛の糸があった。

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