王妃の日記 | ナノ


 ◇第十六罪:罪の鎖で繋ぐ絆−1/6−
side 英

ギィィイ
『仮の寮』の地下に続く重い扉を開けた。
吹き込んでくる凍てつくような空気。

「……冷えている……たぶんここだ」

「へぇ…本当にこの先に……」

「やっと信じる気になったか?暁」

学園中を探してやっと見つけたこの場所。
石造りの階段を降りた先には、氷付けの美しい女性が眠っていた。

これが……

「"狂咲姫"……緋桜閑……」

「お前の考え通り、自分の躯を脱ぎ捨てたらしいな……」

だとすると、あのとき紅まり亜から感じた純血の気配は本物。
……ということは、あの方に対する僕の仮説も当たっていることになる。
黒主白亜……あの方は……。

「……貴方がたには関係のないことだよ……」

突然声がした。
そこに現われたのはどこかで見たような仮面の男。

その男は氷を打ち割ると緋桜閑の躯を抱きかかえ、そのまま去って行った。


――純血種の躯を傷つけることは許されない――


それは吸血鬼界の絶対の掟。
僕たちは黙って見ているしかなかった。


「……行かせてしまって良かったのか?英」

「枢様のお考えがわからない以上、ヘタに動けないだろ……」

そう……
枢様は何を考えていらっしゃるのか……

「そうだな。まずは寮長に報告…か」

「ああ……頼む。暁……」

僕はもう少しここに残ろう。
今夜何かが起きる。
そんな確信めいたものを感じていた。

115

/
[ ⇒main]
page:




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -