王妃の日記 | ナノ


 ◇第十五罪:純白×真紅×漆黒−1/8−
「……どんなに姿が変わっても、ちゃあんと見分けてくれてえらいわよ……? 零……」

『仮の寮』のホールに響く少女の囁きは、そのあどけない顔に似合わず妖艶さを孕んでいた。
追ってきた優姫は壁に隠れながら中の様子をそっと伺う。

「君の"人間"としての生を奪った私のことを……」

「ああ……忘れない……」

憎しみと怒りに満ちた零の声。
静かな中に計り知れない激しさが垣間見える。

「緋桜閑。あの日、お前の本当のかおは俺たちの血で濡れていた……」

紅まり亜の正体は緋桜閑――。
明らかになった事実に優姫は驚愕した。

キンッ
まり亜の刀と零のブラッディローズが交差する。

「ぜ……!!」

出て行こうとする優姫は白い手に阻まれた。

『……間に合ってよかったわ……』

その小さな呟きは、意識を奪われた優姫の耳には届かなかった。

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