届かない



本編中




『死にたくない』

当たり前だ。誰だって死にたくはないさ。

『死ぬってどんな感じなんだ…痛いのか…?』

さぁな。痛みが無い方が良いに決まっているが。

『死の直前、イオンはどんな気持ちだったんだろう…』

あの導師はもういない。


頭に直接流れ込んでくる意識はいつまで経っても静かになる気配はない。フォンスロットを通じたこの回線は、あの屑に相当な負担になるはずだがいつまで経っても回線が繋がれていることに気がつかない。寝ていていようが、何時もは激しい頭痛によって飛び起きるというのに。


『いつ消えるんだろう。もしかしたら、もう目が覚めることもなく明日には消えてしまっているかもしれない…そんなの、嫌だ…』

だから眠れないのか。

『怖い…嫌だ』

……まだ七年しか生きていないお前には辛い現実だな…



壁に凭れていた背を離し、隣の部屋へと足を運ぶ。

「おい、屑」

ドア越しに呼んでみるが返事はない。
確かこいつは部屋に鍵を掛けていないという話を昼間ガイに聞いたばかりだ。あの親馬鹿はこうなる事を知っていて話したんだろう。

容赦なく開いた扉を静かに閉めて、ベッドにできた膨らみに近づいた。優しい夕陽色をした髪を白い枕に散らし、顔まで覆った状態の掛け布団を少しだけずらしてやれば、汗に濡れながら苦し気に息を乱す屑の姿。眉は下がりきり、悲痛な表情までも浮かべている。

「…ルーク、」

軽く体を揺すってやれば、涙を滲ませる瞳を大きく見開いてから息を詰めた。

「あ…しゅ…?」
「この馬鹿、何故呼ばない」
「呼ぶ…?」
「こんな時くらい、そばにいてやる」
「……ありが、と」

宥めるように、安心させてやるように抱き締めてやっても、ただ微笑むだけで、レプリカの腕が俺に回される事はなかった。


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アッシュに遠慮するルークとルークを大事にしたいアッシュ



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