脱走



ED後


それに触るんじゃねぇ!!!

帰還してからは見たことない剣幕で彼は声を張り上げた。まるで以前旅をしていた頃の彼を、沸騰とさせるそれに思わず恐怖心で肩を震わす。彼の目を見られない。またあの憎しみの籠った瞳でいぬかれていたら今度こそ俺は…。




今日は二人とも久方ぶりの休暇で、互いの部屋で休んでいたのだ。まだ疲れが残っていてもう一眠りしようと再び瞼を閉じたとき、ノックの音とアッシュの声が聞こえた。急いでアッシュを部屋に招き入れてから自分がまだ寝巻きであったことに気付き、クローゼットを開いて服を選んでいたときだった。カシャン、と軽い金属が落ちる音が聞こえ、そちらに目を向けると小さな指輪が落ちていた。何だろうと拾おうとしたときだった。彼の鋭い声が響いたのは。

「ご、ごめん」

以前の癖だろうか。反射的に出た言葉は謝罪のそれだった。帰還してからは互いの間に穏やかな空気が流れ続けていたのもあって、たった一言の怒号にさえ堪えてしまった。アッシュの顔を見ないようにそのまま部屋を飛び出してがむしゃらに走って向かった先は港だった。なんで港なんて来たんだろうか。今はよほどバチカルを放れたいらしい。自嘲じみた笑みが口許に浮かぶ。

「あれ?ルークじゃないか。どうしたんだ、こんな所で」
「ガ、ガイ!?」
「はーん。さてはアッシュと喧嘩でもしたんだな」

船から下りてきた金髪の親友は俺の髪をぐしゃぐしゃとかき回して、お得意の笑みを浮かべた。
先程の出来事を説明すると、目を大きく見開き「あれか…」と呟いた。

「昔アッシュがナタリアと約束した時に交換した指輪だと思う。あの時のアッシュ本当に満たされた表情をしててな」
「なんだよ、それ」

なんなんだよ、それ。自分のなかで悔しいような悲しいような、よくわからない感情が渦巻く。それが嫉妬なんだと分かっていたけれど気にする余裕なんてなかった。

ガイに礼を言って急いで帰った屋敷では、どうやら突然走り去っていった俺の捜索が言い渡されていたようでごった返していた。
使用人やメイドの安心したような声もどこ吹く風。足早に離れに向かい、二つあるうちの一つ…俺の部屋の扉を荒々しく開く。未だその小さな指輪に向かい合っている恋人に向かって、彼とお揃いの首にかけていたシンプルなシルバーリングを投げつけた。驚いたように此方を振り返った愛しい人に今度は俺からの怒号。

「もう一度俺に受け取って欲しかったらよーく考えろ!!それまで俺に触るんじゃねぇ!!!!あと探すな近づくな!!!!」

再び走り去る俺を慌てたように追いかけてくるアッシュを尻目にガイと一緒にアルビオールに乗り込んだ。さて、グランコクマで何をしていようか。




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プロットがわりに書いたもの。つまりただの目も的な文。


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