それなら、いっそ






「どうせその気がないなら、殺してしまえばいいじゃないか」

笑顔を向けながら放ってきた一言は、想像以上に俺の心を揺さぶった。

「いつまでもずるずるずるずる引きずっていないでさ。置きっぱなしにしないでくれよ、変に期待しそうになる時期は、とっくにすぎたけど」

顔は笑っているのに、どこか乾いたような声が俺の鼓膜を揺るがす。

「だって、俺は偽物なんだ。人間もどきの複製品なんだ」
「何を…」
「そのうち消えちまうんだ。そして、忘れられる存在なんだよ」

疲れたように髪を弄っていた右手をソファに力無くたたきつけると、今度は左手で勢いよく俺を指差してきた。ぎっと睨みつけてくる翡翠は爛々とした暗い輝きを放っている。

「お前が今俺に向けている愛情だって!!俺が消えてなくなってしまえば忘れちまうんだ!なくなっちまうんだ!!」

じわりと目尻に溜まった涙もそのままに、もう一度大きく息を吸い込んだルークは喉がつぶれるんじゃないかと言うほどの悲痛を大きく叫びあげた。顔を両手で覆って悲鳴を上げながら天井の方を向いて…しばらくして悲鳴は止んだ。

「お前だって…そのうち俺を忘れるんだ…は、ははは」

茫然とした呟きともとれる言葉の後に、嗚咽混じりの乾いた小さな笑い声。

「もう、疲れたよ…」
「ルーク!?お前、今日はやけに様子がおかしいぞ」

抱き寄せた体を引きはがそうとしてくる腕の力は弱弱しく、普段剣を振るっているのが嘘のようだ。

「俺、ここにいるんだよ…」



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