掠める赤ED後捏造 急に意識が浮上してきた事で、自然と瞳を開く。寝ぼけた頭では、今自分が暖かい何かに包まれて心地よいという状態しかわからない。ぼーっとしたまま伸ばした腕をシーツに擦るように動かして、ひやり、と暖まった体温に心地よい 冷たさが腕に伝わってきた。 「んー…」 冷たい...? 「うぅ〜…」 もう一度腕を上下に動かす。ない、昨日寝る前にあった暖かさが。 「アッ、シュ…あれぇ...あっしゅぅ」 一気に覚醒して飛び起きて昨日の温もりの主を呼ぶが、出てきたのは頼りなげな寝起き特有の掠れた声で自分が急に情けなく感じた。 長い時間寝ていたのか、全身が怠くて仕方ない上に飛び起きた反動によって頭痛までも引き起こしてしまいそのまま布団の上にボスっと音をたてて再び戻ってしまう形になった。 ずきずきと痛む頭を押さえて昨日の事を振り返ってみる。 普段は頑なに一緒に眠るのを拒む赤色の髪をした愛しい人は、昨日夜も遅く公務から帰って来たそのままの足で俺の部屋におもむき、何故か一言も言葉を発することなく既に布団に入っていた俺の横に潜り込み珍しく添い寝をしてくれたのだ。昨日特別何かがあったとかそんな記憶は全くなく、ただの気まぐれだったとか…もしかして公務で嫌なことがあったとか。いや、だとすると物凄く不機嫌面で帰ってくるし。 「まさか、俺が足りなくなって補充したかったとか…」 うっわ。馬鹿じゃねぇの俺!そんなことあるわけねぇじゃん!! 両手を振って顔に集まった熱をごまかすように自分の温もりが残った布団に潜る。誰が見ているわけでもないのに俺は何を焦っているのか… 「ふあ…あったか、い…ねむ、ぁ」 自分の体温でよく温まった布団によって自然と瞼が落ちてくることに抗うことなく身を委ねようとしたところで、微睡んだ視界に赤を見た。愛おしいその色を発見した喜びをそのままに飛びつきたい衝動に駆られたが、悲しきかな。意識はそこで途切れた。 「まだ寝るのか。本当に寝汚い奴だな」 「…すぅ」 「アホ面。ゆっくり休め」 昨日は公務中にずっとルークから意識が流れ込んできて集中できなっかったのだ。きっと無意識なんだろう。こっそりと回線を繋いでみたものの普段通りに勉強に励んでおり、別段変に落ち込んでいたりなどはしていなかった。その普段通りが無理をしているラインなのだが。 (早くアッシュの役に立つように) (もっと知識をつけないと) (こんなんじゃ駄目だ。しっかりしないと) 無意識だろうと自分を追い込むのは旅をしていたあの頃となんら変わらず、その原因の一部が自分にあることに今となっては罪悪感に似た何かを感じるようになった。あの頃の事を思い出すとどうにも胸が苦しくて、どうしようもない不器用な奴だったのだと自覚させられる。今となっては何にも変えられないほど大切になってしまった半身の元へ急ぎたい気持ちを抑えつつ公務を終わらせ、帰宅と同時に愛おしい朱色をきつく抱きしめて眠った。 今まで自分の理性を保つ為や甘えになってしまわないようにルークとは共に寝ないようにしていたのだが、共に眠ることで不思議なくらいに体の疲れやストレスが吹き飛んでしまった。これならばこれから毎日共に寝てもいいか、と思ってしまった時点で甘えなんだろうとは思う。 「俺も甘くなったものだな」 すやすやと寝息を立てる朱色の髪を優しく撫でる。自分と違いふわふわとした髪はとても心地いい。ルークの隣に昨日と同じように潜り込んでその体を抱き寄せた。 「違うか、お前と同じように変わったのかもしれねぇな」 「…ん」 「おやすみ、ルーク」 そっと額にキスを落とす。ふにゃりと緩んだ口元にも一つ。 「好い夢を」 愛しい存在を確かめながら俺もゆっくり眠りに落ちた。 -------- ルークとの添い寝がくせになった元鮮血さん。この後ルークにベッドから蹴落とされます(笑 |