此方へどうぞ



きっとED後


この間までの寒さなんて嘘のように輝きながら熱を放つ空へ一睨みきかせたあと、手元にあったスコップを再び握り直す。ザクザクと砂を割くこの感触と音は中々に好ましい。慣れると楽しいのものだ。軽く鼻歌を歌いながら手を動かしていると、頭上に影が射した。見上げると、暑さと眩しさに顔をしかめた同じ顔。

「お前なー、帽子くらい被れよ。暑くねぇの?」
「暑いに決まってんだろ…」
「俺の貸してやろうか?」
「いらねぇよ。それよりあれ見てみろ」

指を指した方を視線で追うと、いつだったか植えたきゅうりがあった。確かこの間見たときには小さい実を付けていて、育つのが楽しみだなあ、とウキウキしていたが、それがどうかしたのかと彼を見る。
よく見てみろと言われて近づいて見るといくつもの実が小さいままに黄色く変色し、枯れる寸前だった。

「うあああなんでだよ!?」
「わからん…デリケートなのかもな。肥料が悪かったのか…それとも水か…?」
「野菜苗は難しいなー…トマトはぐんぐん伸びるのに」
「お前は花の世話に夢中だしな」
「じゃあアッシュがやればいいだろ」
「うるせえな。俺はそういうのに向いてないんだよ、この屑」

眉間に皺を寄せながら汗を流す様は、普通の人ならカッコいいだの、似合うだの言うんだろうが、俺からしたらコイツそんなに暑いのか、というすっとぼけた事しか出てこない。

「んー、まあ、とりあえずお前は中に入れよ」
「あ?」
「見てるほうが暑いって、それ。ほらほら入った入った」
「な、なんだ急に…!」
「調子悪そうだからさ、俺に隠し事できると思ってんのかよ」

すると当然のように頷いてくれるコイツに軽く拳をお見舞いして部屋に捩じ込む。タオルをボスッと投げつけてやると、またぎゅっと眉間に皺が寄った。

「水、持ってくるから」

ひらひらと手を振って目指すは冷たい井戸水だ。自分より起きるのが遅い上に汗だらだらで眉間に皺寄りっぱなし。調子が悪いことなんて直ぐにわかるのだ。
まあ、でも…この観察力もきっとアッシュにしか働かないんだろうけど。そう思うと自然と笑みが溢れた。


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