それで?貴方はどうしたいんです?



ED後のとある二人



きっかけは何だったかは覚えていない。いやしかし目の前のコイツがキレる瞬間の恐ろしい事恐ろしい事。違うな、嘘だ。ハッキリと覚えている。自分の都合の悪いことには多少目を逸らしたい、コイツの事を偉そうに言えない部分も少なからずある。いや、しかしコイツよりはマシなはずなんだ、きっと。



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ゆったりとした時間の流れる夜のケテルブルクは一段と冷え込む。素足を投げ出してベッドに転がっていれば当然時間の経過と共に体温は下がっていく。無意識に足先を摩っていたことに気が付いて毛布の間にすっかり冷え切った足先を突っ込んだ。

「寒いか?」
「…少し」
「そうか」

ひょいと彼の手から暖炉へと投げられた薪が爆ぜる音が心地いい。火かき棒冷たそうだな。
ぼうっとするのは好きだ。特にベッドの上なんかでは最高に落ち着く。気づいたら眠ってたなんてよくあることだ。でもまぁ、そんなことになったら大抵彼が寝汚いと罵ってくるか「そろそろ脳が溶けるんじゃないか?」とか失礼な事を言ってくるんだろう。世界を飛び回っていた頃はそんな事言われるたびに落ち込んだしイラついたし、うん。いろいろあったなぁ。暖炉の火の揺らめきに合わせて踊る影が面白い。以前に比べて少し減った眉間の皺とか。疲れているんだろう、目の下の隈なんかも何となく窪んで見える。少し休めよ。公務とかレプリカ問題とか、忙しいのはわかってる。まだ体が本調子じゃないから長時間の手伝いができないのが悔しい。

くるり、急にこちらを振り返った彼がい心地悪そうに眉間にぎゅっと皺を寄せる。あー、また痕が付くぞ。ぜっかく薄くなってきてたのに。

「言いたいことがあるならハッキリ言え、この屑」

いや、何も言ってないけど。てか屑っていつまで呼ぶ気なんだよ。昨日も子供たちの前で恥かかせられたし。

「じっと見てんじゃねぇ。目じゃなくて口で言えってんだ」
「そんな気にすんなって。ただ懐かしいなーとか色々思ってただけだからさ」
「ふん、お得意の卑屈の事か。お前も飽きないな」

少しカチンときた。

「それはお前の事を考えるとどうしても…」
「俺が可哀想だったってか?」
「は!?急に何言いだすんだよ!そんなこと思ってない」
「どうだかな。当時のお前ときたら言いたい事も中々はっきりと言えないとこばかりだったろうが」

頭に血が上った。本当に久しぶりにだ。帰還してこのかた穏やかな時間が流れていると思った途端にこれか。乱暴にベッドから起き上がってアッシュの目の前まで足音あらく進んでやる。

「言いたいこと言えだ!?ああわかったよ!!言ってやるよ!!!そこ座れ!!!!」



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あれからかれこれ何時間経ったのだろうか。背にしている暖炉が熱くてかなわない。しかしここで動いたら「動くな!!」と一喝されそうでなかなか動けない。困った。それだけが困った要因ではないのだけれども。予想外に怒っているルークにかける言葉も見つからず、延々と続くお説教というかなんというか、もはや悪口に達しているこの言葉にグサグサとさっきから心が抉られて辛い。ひじょうに辛い。言いたいことと言えと不機嫌に訪ねた自分が悪いんだろうな。言い返したくてもルークのいうことも一理あって反論できない場面も多く。いったいどうしたらいいものやら。ぐっと顔が引きつっだり口を引き結んだり。

「あっはっは!!アッシュ顎に梅干しできてるぜ!」

爆笑するルークのいい笑顔。結構すっきりしてきたんだな。
とうとうそんな無様晒しちまったか…とか思いながらも、やっと笑顔を見せてくれたルークにほっとする自分がいた。










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キレるつもりがキレられたアッシュの話。



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