「平凡って、難しいよね」 「冷…?」 もう辺りには星がちらついてて、御堂弟、もとい竜は眠そうにあくびをしているのが見える。 御堂君、いや龍はフライに乗れないからさぞかし疲れたことだろう。 「水沢、じゃなかった、冷。冷の平凡って何だ?そういえばお前のは聞いた事ねぇな」 「え…?」 考えたことも無かった。 私にとっての、平凡。 皆(私は大人以外)名前で呼ぶ様になって質問とかも気軽に出来る様になった訳だけど……まさか自分がそんな質問されるとは…。 「そだったね、考えたことも無かったや」 「平凡は、いつも通り訪れる。俺でもそうだ。冷もきっと、隣を見ればある」 口下手な龍が長い間話した事にもびっくりしたけど、まさか龍がそんな事言うなんて。まるで黒木さんでも乗り移ったかの様だ。 「龍、大人になったんじゃないか?」 からかって雪見さんがうりうり、と肘でつつく。 「やめて下さいよユキネコさん」 「怖ぇぜ、その目付き」 龍の背負った竜が眠ってしまって口を閉ざしてしまった様に(今は口下手な兄の方が饒舌だ)、また黒木さんも何かを考え込む様に口を閉ざしてしまっていた。 「黒木さん」 「ん?どうした、冷?」 黒木さんは、人の心は覗き見ているかの様に、手に取っているかの様に分かっているのに、自分の本心は滅多に見せようとしない。 実は結構怪しい、信用してはいけない人物なのかもしれない。 「何、考えてるの?」 「んー、平凡、かもな」 「適当な…」 黒木さんは空を仰ぎ見ては遠い何かを見つめる様な目をして寂しげに笑う。 「あの上に、居るの?黒木さんの元カノか何かが」 「居ないからな!?ま、居るのはお前…じゃなかった猫の母親だよ。いい人だったからな、きっと…」 「好きだったの?雪見さんの、お母さんが」 「そんなんじゃない、本当に。生きていてくれたら、安心だったのにな。雪彦さんがあんな風になる事もなかった。…いや、断言は出来ないけどな」 どうして今更、とか気にならなかった。 雪見さんの事を本当に心配しての事だろうから。 「帰ろっか、」 「ああ、冷ももう寝る時間だからな」 「黒木さんのバカ。私もう高校生だよ?」 「美容に悪いぞ?」 「……まあ、少しぐらい早く寝てもいい、かな?」 雪見さんと龍が意気投合しているのを黒木さんはどこか嬉しそうに見ていた。 11.06.02 戻る |