彼は無害だった。そう、無害だった。
「……僕は、何度も拒みましたよね」
つまり、有害にしたのは私。
彼の言葉にうなずいて、うつむくマリンブルーを見つめた。いつもより暗い気のするその色がゆっくりと私を捉える。
「今更、撤回したりしないよ」
ネメシスってすごいんだなって思うのは、彼の意思に味方してこんな御誂え向きの空間ができてしまうこと。いつのまにかどんどん空間が広がっているこの世界、こんな空間ができていたところで誰も怪しがりはしないだろう。
「私は烈風刀くんにこうされていたい」
枷はない。鍵もない。だけど逃げない、逃げたりしない。私はこの空間で烈風刀くんに閉じ込められていたい。管理されていたい。体調を壊すことは許されない。だって彼が徹底的に管理してくれるから。
「君がこんな僕を望んだんです。こんな僕は嫌いだ、大嫌いだ……だけどなまえがこんな僕がいいって言うから……」
彼は泣いているのだろうか。
でも、彼は間違いなく私にとって有害。だから私も一緒に泣こう。彼が無害のままじゃいけなかった理由が見つからないから、泣こう。
私もそんな彼を望む自分が大嫌いだ。
―――
共依存へ引きずり込む
19.02.09
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