「ランス様、今日はエイプリルフールですよ。」
「貴女は私を騙そうというのですか?」
「いえ、そんなつもりは。」
「ではどういうつもりです。」
「他の部下達などを騙せば宜しいかと。」
「ああ、そうですか。」
今日、私は面白半分で自分の上司に当たる人物、ランス様に本日がエイプリルフールである事を教えた。
「では少し嘘を吐いて来ますかね。」
「どうぞ。」
「ああ、では貴女は先に書類を片づけに行って下さい。」
言われた通り片づけに行った…のだが、
「書類なんて何処にも無い…!」
まさか騙された?いや、でも探せばある…筈だ。
「ああ、騙されましたね。」
クスクス、と緑の上司が笑う…。ああ、騙された。
「ランス様…!」
「どうです?見事に吐けたでしょう?嘘を。」
さぞ可笑しそうに笑うランス様に私はハァ、とため息を吐いた。
「私は此処になまえ、貴女を呼び出したかっただけなのですよ…。」
「ランス、様…!?私の…名前…!」
「当然です。」
グイッと壁に押し付けられる。私は一体何が起こっているのか分からなかった。
「なまえ…。」
ランス様が唇を私の耳元に近づける。ランス様の顔がすぐ近くにある。考えただけで顔が熱くなるのが分かった。
「私は…貴女が、なまえが好きの反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対の反対ですよ。」
「?」
理解するのに時間がかかった。要するに最後は嫌いに行き着く訳だ。だけど今日はエイプリルフールなので…。
「つまり、私が、好き、と?」
「ええ。貴女がこの程度も分からない様な方だったら少し私は呆れていましたよ。」
告白時もこの見下しは変わらない様だ。だけど、あの、ランス様が、私に告白だなんて…。しかもエイプリルフールに。これも嘘なのかもしれない。この人の事だから後で話のネタにでもするのかもしれない。
「なまえ、貴女は?」
「…私は嘘吐きです。だから今から言う事全部嘘ですからね。」
「ええ、分かりました。」
「ランス様なんて私は大っ嫌いで嫌な上司だと思ってますし、抱き締めて欲しいなんて思ってません!」
「ああ、そうですか。では、貴女の望みの通りにしてあげましょう。」
バシン、と叩かれた。…え?
「フフフ、今日はエイプリルフールですよ?忘れたのですか?」
「…!」
カァッと顔が赤くなる。わ、私、告白損…!?…そして私はまだこの近い体制のままだった事に気づく。
「今日はエイプリルフールです、よく考えてみて下さい。」
耳元でボッソリと囁かれる。…なんとなく分かった気がする。ひねくれたランス様の事だ。きっと…そうに違いない。
「分かりましたか?」
「…愛情の裏返し…ですか?」
ランス様が眼を見開く。どうやら当たっていた様だ。
「フフ、貴女が私は大嫌いです。」
なんて歪んだ愛情だろう、なんて思ってしまったけど、だけどランス様の愛情なのだから仕方ないと思えてしまった私はもう末期かもしれない。
―――
ランス様初めて書いた。
良いよね、ランス様。
あのお尻が気になるけど!
11.04.02
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