「お前ねぇ…」
どっさりと紙袋の中に入ったチョコに自分のチョコも足せば嫌そうな顔をする仙道さん。
「何まぎれさしちゃってんの」
私の置いたチョコを持ち上げながら恋人と審判の逆位置、わかりやすいねぇ、とにやつかれれば私の機嫌が悪くなるのはお約束。でも正直恋人と審判の逆位置の意味ってなに?
「言い返せないみたいだねぇ。ああ、恋人と審判の逆位置の意味はこの状況の場合は両方嫉妬、だね。顔見ただけでわかるけどタロットにまで出ちまうなんてねぇ。なまえはわかりやすくて助かるよ」
いまいち馬鹿にされてる様な気がしてならない。殴ったりなんてしないけど。恐いもん。
「私もタロット勉強すればもう少し余裕持てますかね、仙道さん」
ムカつくのは郷田さんには余裕のよの字も出さないくせに私といる時は大抵余裕な事。私とLBXバトルしているワケでもないのにさ。というかね、言いたいのはね、もうちょっと色んな顔が知りたいの彼女として!
「へえ、うまく固まってるな。美味いぜ、なまえ」
「あ…っ、ありがとうござい、ます…」
何だこのテク。ちょっと突き放しといてデレるとかさ。しかもいらねぇよとか絶対言うと思ったのに言わないし。
「甘ったる…。他のいらないな」
「え、」
「捨ててくる」
風間も余計な事するよ、と冷たく紙袋の中のチョコを見ると紙袋を持って仙道さんは部屋から出ていった。
「あ、カズからメールきた」
見れば“仙道が俺に大量にチョコくれたんだけどどういう風の吹き回しなんだ?”なんてメールが入ってて吹いた。きっと仙道さんの事だから勿体無いしアイツにでも押し付けるか、とか何とか思ってカズに袋ごと渡したんだろうな。
まだ甘い香りが残る部屋で私は部屋の主の帰りを待っていた。
―――
仙道さんが恋しい←
12.02.11
戻る