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「玉砕しました〜…!」


半泣きで飛び込んだのはマスター檜山さんのブルーキャッツ。カランカラン、と可愛くベルが鳴る。檜山さんがいらっしゃい、と言いかけて口をつぐんだ。カウンター席に座って突っ伏せば頭を撫でられる。


「ダメだったか」
「ダメだったんですよ…」


バタバタと足をばたつかせれば檜山さんが苦笑しながらオレンジジュースを出してくれる。


「随分と見る目がないな、ソイツも。なまえが子供っぽすぎて眼中になかったのかもしれないな」


ム、と檜山さんをジト目で見るとそういうところが子供っぽいんだ、とクスリと笑われた。悔しい。


「あのですね、大学生イジメ反対です」
「おっと悪かったな」
「というか私が飲みたいのオレンジジュースじゃなくてコーヒーですが」
「そいつは悪い。俺が今飲んでるのが最後だ」
「嘘つけ!」


何だかんだオレンジジュースを飲むと酸っぱいけど美味しい。流石果汁100%。


「檜山さん檜山さん、オレンジジュースじゃチョコ食べられないです」
「別にいいじゃないか」
「後処理ぐらいさせてくださいよぉ」


全部減らないオレンジジュースが恨めしい。半分にはなったけど全部なくならなきゃコーヒー頼めないじゃないか。


「俺に渡せ」
「…え、っとぉ檜山さん?」
「いいから俺に渡せ。お前のチョコを貰ってやると言っているんだ」


出た!檜山マスターの本性…!とか言ってる場合ではなく目が早く出せと言っている。恐い。


「どうした渡せないのか?」
「ど、どうぞ…」


威圧感に負け、ひきつる笑顔で渡せば檜山さんが優しく笑った。気がした。


「随分と気合い入れたもんだ」
「もうどうだっていいですよ…」


もぐもぐと嬉しそうに食べるマスターがちょっと可愛かったとかは内緒。


「俺に心変わりしないか?愛してやれるぞ?」
「…ちょっと考えさせてください」





―――

檜山さんにチョコ渡したい←




12.02.09



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