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※毎度のごとくマイソロ3設定



「むぐ…んむ、もぐもぐもぐもぐ…」
「うう…何か頭痛がするわ…。およ?なまえちゃん何食べてんの?」


顔をしかめるレイヴンがなまえに問うとなまえはくるりと振り返り、屈託のない笑顔で微笑む。そして笑顔で言うのだ。


「チョコレートです!」


チョコレート、レイヴンにとって甘いソレはレイヴンの苦手なものに分類されていた。なまえは笑顔で美味しそうに食べる。レイヴンの顔色は悪くなるばかり。ひとつ、またひとつと平らげていくとレイヴンを見てなまえはまた一言。


「レイヴンさんも食べますか?」


笑顔のなまえにたじろぐレイヴン。女の子の笑顔にたじろぎ、ひきつった笑顔を見せるレイヴンはなんとも珍しい。レイヴンの表情に気付かないなまえはレイヴンにチョコレートを差し出す。なまえの次の表情を予想し、受け取る事もできないレイヴンはただ後退りするだけだ。


「あ、あはは、おっさんはその…、遠慮しとくわ!なまえちゃん、食べるでしょ!?」
「レイヴンさん…チョコお嫌いですか?」
「…嫌いというか、苦手なのよ、甘い物。おっさんダメなの。だからなまえちゃん気にせず食べて?」


笑顔でうなずくなまえはまたペラペラと喋りだす。よくもまあ話題が尽きないものだ。


「ならチョコレート、全部食べちゃいますねっ」
「あ、ああうん…?」


勧めてしまってすみません、と謝るなまえに慌ててレイヴンは怒ってなんかいないとなまえに作り笑いを見せる。そうするとなまえはまた悲しい表情でレイヴンを見てうつむくのだ。レイヴンは更に慌てる。


「ちょっ、なまえちゃんどうしたの!?おっさん全然気にしてないからっ、ねっ?」
「…だってレイヴンさん、笑ってないんですもん。私のせいですか…?」
「ち、違う違う!おっさん甘いモンダメって言ったっしょ?匂いからしてもう耐えられんのよ…。なまえちゃんのせいじゃねぇわ」


レイヴンが苦笑するとなまえは安心した様に笑い、チョコレートをぱくつく。


「……ねぇなまえちゃん」
「何ですか、レイヴンさん?」
「さっさと食べ終わっちゃってよ。俺様がなまえちゃんにチュウできないでしょーが」


悪戯に笑うレイヴンの言葉になまえは赤面し、駆け出してしまう。


「あちゃー、からかいすぎたか…?」


甘い匂いの残るその場から離れようとするレイヴンに向かって再びなまえの声が聞こえた。


「レイヴンさんっ」
「およ、なまえちゃん早いねぇ」
「あ、あの…レイヴンさんにっ!」
「へ?」


なまえの渡してきた箱にはレイヴンさんへ、となまえの字で書いてあり、可愛らしくラッピングしてあった。まだ赤面するなまえにレイヴンはなまえを見るしかない。


「あ、あのですね、私ホントは知ってました。レイヴンさんがチョコ食べられないコト…。だ、だからですね、教えてもらったんです、クレアさんに。甘くないチョコレートの作り方…」
「なまえちゃん…!」
「ええっと、ハッピーバレンタイン、です」


どうも船中に甘い匂いが漂う、と顔をしかめていたレイヴンはようやく思い出したのだ、この日が2月14日、バレンタインデーであるという事を。そしてそうなってしまうとなまえが何故チョコを渡しているかもわかる。料理の苦手ななまえが一生懸命に作って何とか形にしたのだろうと考えるだけで感動して涙が出そうになった。“受け取ってくださいますか…?”と不安そうに見つめるなまえへの愛しさが込み上げてきて思わずレイヴンはなまえを抱きしめそうになった。


「…勿論。俺のチョコでしょ?名前書いてあるし?」


食べなきゃ勿体ないもんね、とレイヴンはなまえに笑いかけ、なまえからチョコレートの入っている箱を受け取る。開ければコロコロと丸いチョコレート、すなわちトリュフが5つ程入っていた。試しにひとつレイヴンが口に運べばなまえは不安そうにじっと見つめていた。甘くないだろうか、口に合うだろうか、美味しいだろうか、何より、吐き出されないだろうか、それがなまえは心配で心配でならなかった。レイヴンが倒れたりなどしたらそれこそショックでなまえはしばらく包丁を握る事ができなくなるだろう。
端から見れば至極どうだっていい事なのだろうがなまえにとってとても重要な事。勝手に最悪の事態の想像をし、涙目になっているなまえにはこの時間がかなり長く感じられていた。


「…ん、美味い!これならおっさんでも食べられるわ全然。料理苦手なのに頑張ったねー、なまえちゃん」


偉い偉い、と頭を撫でれば弾けそうな笑顔でなまえはレイヴンを見る。そしてようやく緊張がほどけたのか深く息を吐いた。


「よかっ…たぁ…。もしレイヴンさんが倒れてしまったらどうしよう、なんて考えてたんです…。本当によかったです、レイヴンさんのお口に合って…。あの、でも残りは無理して食べてくださらなくてもいいですからね?」
「んなの食べるに決まってんでしょーが。なまえちゃんからの愛の塊よ?受けとんなくてどうすんの、俺」


笑顔でひとつ、またひとつとレイヴンがチョコを食べていけばなまえは嬉しそうに笑っていた。あっという間になくなってしまったチョコ。残った箱を見てなまえは本当に嬉しそうだった。


「なまえちゃん、おっさんなまえちゃんにチュウしてもいい?」
「え…っ」
「ああ無理、我慢できねぇわ」


そっとなまえに口づければまた赤に染まるなまえの頬。


「チョコの味がしました…」
「なまえちゃんの愛の味よ。美味かったっしょ?もうおっさん感激しちゃったわー、なまえちゃんがそんなに俺様を愛してくれてるなんて…、ねぇ?」


楽しそうに笑うレイヴンにどんどん赤く染まっていくなまえ。その様子が可愛くて仕方ないらしく、レイヴンはなまえをからかい続けていた。


「お、なまえ……とレイヴンじゃねぇか。なまえ、ありがとな、あのチョコ。美味かったぜ」


んじゃな、と去っていくユーリにレイヴンの笑顔が消えていく。なまえは首を傾げるだけ。


「………なまえちゃん、ユーリにもやったの、チョコ?」
「? はい、えっとその…義理?ですけど」
「なあんだ、そうなの。そうよね。なまえちゃんはおっさんを一番愛してるって言ってくれたもんねー?うんうん、本命と義理は大違いよねー」


一瞬顔をしかめたレイヴンだったがすぐに笑顔になり、なまえを抱きしめた。いつもならすねてみたりしてなまえの気を引こうとするのだが今回は上機嫌らしい。なまえは恥ずかしそうにうつむきながらレイヴンの胸に顔を埋めていた。



―――

何と言うか「チュウできない」の辺りが言わしたかっただけですゴメンなさい



12.01.29



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