僕はなまえさんを待っている。僕が初めて交際したいと思った女性だ。
「ゴメン、待った?」
「いいえ、全然。今日はお連れしたい所があって…」
「わかった。ジンについてくね」
年上の女性なのだが僕は子供に思われてないだろうか?何せ郷田君や仙道君より年上なものだから…。
こっそり手を繋がれる。ああ、ここも僕がリードしなくてはいけないところなのに…。
「…すみません、頼りがいのない彼氏で」
「ううん!私はジンで満足だよ?じゃなきゃ、ジンを選んだりしてない」
ふんわりと笑む彼女に見とれて思考が止まった。いけない、今日こそは彼女をリードし、見直してもらわないといけないのだ。
「なまえさん、ちょっとそこで待っていてください」
「え?あ、うん…」
彼女の、なまえさんの為に頼んでおいた特注品。
「貴女の為に、コートを選んだんです。受け取って、いただけますか?」
正直緊張している。もしなまえさんに“コートは間に合ってます”なんて言われたら僕は再起不能になってしまうかもしれない。
「ありがとう、早速着ようかな」
「! こ、こちらこそ…!」
なまえさんはそれまで着ていた可愛らしいコートを脱いで、僕の差し上げたコートを着てくれた。
「なまえさん…、その…よく似合います」
「ありがとっ」
寒いけど暖かい、と縮こまる彼女は笑顔で。すごく、可愛いな、と思った。
「よ、良ければ今日は海道邸でご馳走でも用意しましょう。だからなまえさん……どう、ですか?」
「うん。ジンとクリスマスの夜も過ごしたいな」
「あ、ありがとうございます」
しっかりと彼女の手を引いて、海道邸まで送ってくれるじいの車まで急いだ。
―――
緊張するジンなんていかがでしょう?
11.12.20
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