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第一印象ってあてにならないものなんだ。
そう思わせるのは、私の前でコロッケと話すフォンドヴォー。正直、フォンドヴォーを初めて見ての印象は冷たそうとか無表情そうとか、そんなもので。まさか満面の笑みも見せてくれて、こんなに面倒見の良い人だとは思わなかった。


「おいおい……そんなに見つめられたら穴があきそうだぜ?」


気がつけば彼は私の前で笑っている。いつのまにかコロッケは駆け出してその辺の岩を片っ端から破壊し始めていた。
フォンドヴォーは隣に座ってきて、からかうような顔をする。


「はっ、うわ、フォンドヴォー……! あ、や、ごめんなさい!」
「オレに見とれでもしたか?」
「え、えと……、フォンドヴォーって本当によく笑うな、って……。私のフォンドヴォーの第一印象は冷たそうな人だったから」
「冷たそうか……」


顎に手を当て、考えるフォンドヴォー。いま見てみれば、こんなにもこの人の空気は柔らかいというのに。隣でホッと一息ついてしまいそうな、そんな穏やかなものなのに。


「オレのなまえの第一印象はバンカーらしくない、だったな。今も思ってないことはないが」
「え、そうなの? らしくないのか……どのへんだろ」
「そうだな……人を傷つけられるようには見えなかったんだ。間違ってなかったが」
「た、戦うときは戦えるよ……!」
「わかっているさ。だが、オレが冷たい……ねえ」


フォンドヴォーの隠れていないほうの片目がちら、とこちらを見やる。


「じゃあ今はどう見えてるんだ?」
「えっ……いまは、いまは……」


口ごもる私をゆっくり待つその空気は本当に穏やかで。冷たいなんて全く思わない。むしろあったかい。それをフォンドヴォーに直接伝えるのはいささか恥ずかしいものがあって、どうしたものかと口ごもり続ける。


「なんだ、言えないような印象か?」
「う……フォンドヴォー、からかわないでよ?」
「ああ。からかわない、からかわない。言ってみろ」
「……逆だよ。あったかいって、優しいって思ってる。フォンドヴォーの空気、好きなんだ。穏やかで……落ち着く」


隣の彼は、その青い頬をほんのり赤らめていた。なんで赤くなるかなぁ、とは思うけれど、好きとか言っちゃったからか。別に他意はないし……うん。


「お前の空気も負けてない。あったかいし優しいし、オレは好きだぞ」


言ってから、彼は照れ隠しのように口元を覆った。何を言っているんだか、というのがその表情から伝わってきて、ちょっぴりおかしくて笑った。


「まあ、なまえに好かれているならよかったよ」


すっくと立ち上がってしまった彼は、そそくさとコロッケのほうへ。私との時間はおしまいか、と思ったけど別にいい。だって、これ以上は余計なことを口走ってしまいそうだから。プリンプリンとウスターがニヤニヤしてるし、からかいのネタを増やしてたまるもんか。
フォンドヴォーはいまの私のイメージ通りの優しい眼差しをこちらに向けていた。





―――

フォンドヴォーって結構ギャップありますよね…?




19.06.28


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