エリアの騎士 | ナノ



“ああ、めんどくさい”。この顔は絶対そう思ってるな。
わかっていながら、私はまだ彼の腕にしがみついて、すがる。


「1個! 1個でいいから!」
「うるさい、知らん」
「知らなくないでしょ、あんなにバイト雑誌読んでおきながら!」


離せと言って振り払おうとする腕に尚しがみつき、食い下がる。
何をそんなに必死に。そう思うかもしれないが、これは私にとって死活問題なのだ。なんとしてでも、私は四季くんの口から聞き出さなければならない。


「いいから! いいから私に合いそうなバイト紹介して! ひとつでいいから!」
「だから知るか! お前に合う合わないは余計に知らん!」
「あんなに読んどいて? あんなに読んどいて知らないの?」
「知るかってさっきから言ってるだろ…。しかもお前…」


四季くんの呆れ返った目線が私に刺さる。更にそれをじろじろと全身に刺してくるものだから、結構痛い。


「……仕事とかできんのか?」


刺さったのは、目線だけではなかった。言葉も沈黙も一緒になって刺さるから、何も言い返せず、ぎこちない笑顔しか返せない。


「悪いことは言わねぇ。人に迷惑かける前にやめとけ」
「ええぇ…。大丈夫だよ、人並みにはできる…と信じてる…!」
「………無理だろ…?」


悲しいほど期待皆無の目を向けられ、私はまたぎこちない笑みを浮かべる。でも素直にうなずくのも嫌で、ただ黙ったまま。


「…安い給料でいいなら、紹介してやれる」
「えっ…! 何、どんなの四季くん!?」
「俺のスケジュール管理とか」


今度は刺さらない沈黙が場を包む。
これは仕事が見つかったと喜ぶべきなのか、からかわれていると怒るべきなのか。考えあぐねていると、哀れんだ表情の四季くんと目が合う。


「お前が可哀想になってきてな…。俺が雇ってやるから、とりあえずそれで我慢しろ」
「え…、あ、本気?」
「本気だ。ちょっとは感謝しろよ」
「あ…、はい」


本気だ、と言われてもいまいち真実味を帯びなくて、この日は首をかしげながら四季くんと別れた。
だが翌日、朝早くに四季くんから電話がかかってきたことで、初めて彼の本気を理解した。





―――

四季くんは本気と言ったら本気のイメージ




16.04.11


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