ポケモン | ナノ


「休憩中ですかー?」


おいしいみずを飲みながら、一息入れていたところ。目の前のバトルファクトリーのヘッドであるネジキさんが軽い足取りでこちらに来た。


「お隣失礼しますねー」


私の腰かける隣にポンと座れば、今度は何故だかむくれ顔。


「ナマエー、最近手ぇ抜いてません?」
「ぐっ…その話ですか…」


ジトリとした目がこちらをロックオンして逃がしてくれそうにない。これは“ロックオン”ならぬ“くろいまなざし”か?
理由を聞くまで帰してくれなさそうなネジキさんに、どう答えようかと頬をかく。


「先に言っておきますと、手は抜いてません」
「むっ! じゃあなんでボクのところまで来てくれないんですかー!」
「……普通に傷えぐるんで言いたくなかったんですけど、最近ほんとにっ、本気でっ、勝てないんですっ!」


肩まで掴んでこられたので降参の意で両手を上げながら答える。自分で言っていて再び傷をえぐられた。
どのポケモンを選んでも、引きが悪いのか単に自分の知識不足なのか、勝てない。焦ってやり直すものの、どんどん連勝記録は悪くなっていくばかりで…。


「あー、そうでしたか…。むりやり聞き出してすみませんでしたー」
「いえいえ…。根を詰めちゃいけないんだろうな、と休憩してたんです」
「はい、ナマエの選択はとっても正しいと思いますよー。はなまる」
「ふふ、ありがとうございます」


むー、とネジキさんが顎に手を当てて考えだす。そして何か思いついたのか、ポン、と手のひらを打った。


「よーし、そうだ! 今日はバトルファクトリーは臨時休業にしましょう!」
「へっ、」
「ヘッドのボクが言うんだから大丈夫ですよねー、きっと。それで、ナマエはボクとデートしましょう。よし決まり」
「えええっ、挑戦者さん困るんじゃ…」
「いいんですよー」


ネジキさんがバトルファクトリーに向けて歩を進めたかと思えば、こちらを振り返ってにっこり笑う。


「だって、ボクにとって一番大事な挑戦者がスランプなんです。脱け出すお手伝いをしなくちゃねー」


悪戯っぽく笑って、また私に背を向ける。
一番大事な挑戦者…。その言葉の意味が彼より頭のよくない私にはうまく理解できず、飲みかけのおいしいみずを片手にぽかんとしているしかできなかった。





―――

心配で様子を見に来たって言ったらきっと君は早く戻ってなんて冷たいことを言うでしょ?




16.12.13



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