ポケモン | ナノ


ミアレシティ探索に疲れ果てた私は、近くのカフェに入ってお茶を飲みながら身体を休ませていた。疲れたね、なんてボールに入れっぱなしのポケモンに半ば独り言の様に呟く。まあ実際この子たちも、ここに来るまでのバトルでずいぶん疲れただろうけど。
一息吐きながらすすったお茶は、まだ熱い。


「やー!ナマエじゃないか」
「わっ!? プ、プラターヌ博士…、驚いた…」


驚きに跳ねた心臓が落ち着きのない鼓動を伝えてくる。少し乱れた呼吸は長く息を吐くことで無理矢理整えた。
「驚かせちゃってごめんね」と外出時の格好の博士が眉を下げて申し訳なさそうに笑む。「いえいえ」と首を振る私に博士の眉は元の位置に戻っていった。


「こっち、空いてるかい?」
「はい、空いてますよ」
「じゃあ僕が座ってもいいかな」
「えっ、あ、いいですけど…。博士こそ、いいんですか?」
「うん。僕が聞いたんだよー、ナマエ」


「おかしなナマエ」なんて博士は言うけど、こんなに人がいないっていうのにわざわざ私の前に座りたがる博士だっておかしな博士ですよ。とは言えない私はクスクス笑う博士を前に、ヘラリと笑みを返すしかしなかった。


「でも、ナマエと会えてよかったよー」
「わ、私と…?」
「ちょうどナマエとお茶したいなー、って思ってたとこだったんだ」


さっき博士が頼んでいた飲み物が運ばれてくる。まだ湯気が立っていて、私にはとても飲めそうにない。博士はそれをいとも簡単に一口飲んで、カップを置いた。
つられた私も湯気が立ち去り、すっかり温くなったお茶を口に含む。これならアイスでもよかったな、とちょっぴり苦笑。


「…何で、私とお茶したいだなんて思ってくれたんですか?」
「前に言っただろう、大事なのは誰と過ごすかだ、って」
「え、はい…」
「僕はナマエと過ごす時が、とても大事なものに感じるんだよ」


思わず飲んでいたお茶を吹き出しそうになってしまった。博士ったら、とんだたらしだ。そんな穏やかな顔で、まっすぐ言われたら変な勘違いを起こしてしまいそうで。
頬杖を付きながらこちらを見るその視線とさっきの言葉に、博士と会った時とは違う心臓の音を感じた。このドキドキはまさしく、甘いそれ。


「…私も、博士と過ごす時間は大事ですよ」
「それは嬉しいなー!赤いナマエの顔も、僕にとっては嬉しいなー」
「えっ!」


冷たくなってしまったお茶を飲んだって、赤い頬は赤いまま。プラターヌ博士、あなたのそのニヤニヤとした笑みはいったいどういう意味合いなんですか?

すっかり身体の疲れなんて、忘れてしまった。





―――

思わせ振りな博士




14.05.12


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