2022/11/11 22:44
「みんなー、ポッキーとプリッツ買ってきたよー!」
近所のコンビニ(勇者さんがバイトしている某所ではない)で買ってきた袋を掲げて、公園でわいわい楽しく過ごしているみんなに声をかければ、途端に明るい瞳たちがこちらを向く。
「おっ、サンキュー! やっぱ今日はこれ食べないとな!」
真っ先に寄ってきた烈くんに続いて、鈴花ちゃん、氷海ちゃん、風雅くんがこちらにやってくる。みんな好きなの食べてね、と袋から箱たちを出すと、それぞれみんながお礼を言ってくれた。
「じゃあ、私はこれを」
「あっ、氷海ちゃんのポッキー限定の味だ! おいしそう! ねえねえ、シェアしていい?」
「ええ、いいですよ鈴花。もちろん、あなたも一緒に食べますよね?」
「えっ、わたし?」
「氷海ちゃんに先に言われちゃったけど、私も誘おうと思ってたんだよ!」
「そ、それは……ありがとう、ふたりとも。じゃあ、一緒に」
女の子ふたりと複数の味をシェアすることになってほわほわしていたら、なにやら男子のほうが騒がしい。
「ジン! それはアイツがオレたちのために買ってきてくれたプリッツだぞ! 返せって!」
「おい烈、騒がしいぞ。彼女にジンの分ももらっていいか聞けばいいだけだろ」
「これは……菓子か」
どうやらジンくんの乱入から揉めている……と思いきや。
「構えろ、烈」
「は?」
「……はっ! お前……プリッツソードの使い手か」
「いやどうしたんだよ風雅」
「どうした、烈。お前にはこのプリッツとやらの力を十分に引き出す実力がないのか? さすが、与えられた能力に甘えて生きてきただけあるな」
「な、なんだと!? オレだって……えっと、トマト・プリッツ剣の使い手だぞ!」
どうやら男子たちはジンくんにのせられて、プリッツでチャンバラまがいのことを始めるつもりらしい。
「みんなそれぞれ構えたな。なら……はじめようぜ!」
風雅くんお得意のかけ声からはじまり、本当に男子たちはチャンバラをはじめてしまった。
「風雅お前ポッキーかよ! チョコが溶けても泣くんじゃねーぞ!」
「溶けるわけないだろ。オレは正式な極細ポッキーの継承者なんだからな!」
「ふん。お前らふたりともそんなものか? とてもじゃないがオレの超カリカリプリッツブレードの猛攻に耐えられそうには見えないぞ!」
「なに言ってんだよ! オレにはトマト・プリッツ剣だけじゃない……旨サラダプリッツソードもあるんだぜ!」
「……ふう。こいつを出す時がきたようだな。こい! アーモンドクラッシュポッキーカリバー!!」
これにはわたしたち女子組ももう言葉もでない。本当に小さな子どものような無邪気な表情で遊んでくれているのは結構だけれど、なぜポッキーやプリッツでチャンバラをしているのか、それが問題だ。
隣の氷海ちゃんが、そんな3人を見てふるふると震えだしている。これはそろそろ、あの剣士3人もまずいかもしれない。
「あなたたち! 食べ物で遊ぶものではありません! 粛清です!!」
氷海ちゃん、怒りのスノープリズムにより、3人は瞬く間に氷漬けになってしまった。
「しばらくそこで頭を冷やしなさい!」
これからはポッキーとプリッツを烈くんたち渡すときは気をつけよう。そう心に決めた放課後だった。