2022/02/08 18:31
街の広場の比較的人がいない場所に所在なさげに立って、キョロキョロと辺りを見回す。買ってきたものを運んでいるのだろう人や、談笑している人たち、今しがた帰ってきたのだろう鎧姿の冒険者たち……。少し見回しただけでも様々な人々が目に入った。
どうしよう、とひとりつぶやく。再びキョロキョロと辺りを見回しても、私の不安なような、ふわふわと落ち着かない気持ちはどこにも着地点を見つけられないでいた。
「姫、ここにいたか」
ザワザワと人が活動する喧騒の中、耳にまっすぐ届いたそれは聞き覚えのあるものだった。戦闘中の覇気は抑えられているけれど、意志の強そうなはっきりとした声は、私を大いに安心させるそれだ。
声のほうへ顔を向ければ、予想通り、トキさんことトキノワさんがおり、いつもの鎧を脱いだ姿でこちらに近づいてきているところだった。
「トキさん……」
「どうしてそんな顔をする? まさか迷子になっていたのか?」
「あ、そうではなくて……」
怪訝そうな顔をしたトキさんには、私が最近の活動拠点としている街で迷子になって困っているように見えたのだろうか。
そうではない、と返した後にふと思う。もしかして私は、道に迷ってはいないが、迷子のようなものなのでは、と。
所在なく、行くあてもなく、ただ街の隅でぼんやり立っていた。どこへ行けばいいのかもわからずに辺りを見回していた私は、迷子と呼ぶものに近かったかもしれない。
「……今日、お休みにしちゃったでしょう」
「ああ。俺も休みがもらえた」
「なんだか、どうすればいいのかわからなくなっちゃって。それでボーッとしてたんです」
「ふむ……そうか」
へらりと、なるべく軽い雰囲気を意識して紡いだ理由はすんなり受け入れられた。
―――
ここで書けなくなりました