ミルクとレモンはどうしますか? 綱+雲



ダメツナ。
もといドン・ボンゴレ10代目。
今此処に存在している彼が10年前はあのダメダメのツナだと言ったら一体何人の人が信じるだろうか。

ほぼ全員――勿論一部の人間は除くが、今彼の近くに昔からいる人間は「一部」の部類だ――が、信じられないと言うだろう。
それ程までに、彼は10年間で見事に成長した。


そんなドン・ボンゴレ、もとい沢田綱吉は書類を処理するのに必死であった。
それもそのはず。
目前には書類で出来た山があり、山脈となり連なっていたからである。
彼の為に言っておくが、決して沢田綱吉個人の能力が他の者と比べて劣っている訳ではない。
それどころか、優秀な部類であろう。

しかし、彼が永久就職することになっているのはあのボンゴレファミリーのトップの座だ。
普通は、デスクワークとデスクワークの合間にちょっかいを出してきた所に抗争を吹っ掛けるのがライフスタイルだろう。
しかしボンゴレファミリーともなれば敵の数も桁外れに多い。
抗争と抗争の間にデスクワークが入っているようなものなのである。

仲間にちょっかいを出した所は全部容赦なく完膚なきまでにぶちのめす。それが綱吉の、ボンゴレファミリーを束ねている者のポリシーだ。


*


ここ一週間、綱吉はずっとこの執務室にカンズメ状態だ。
しかし頑張ったかいもあり、書類の山脈はおわりも見え、とうとう山となった。

このくらいの量ならあと3時間程で終わるだろうか。そう思いながら最後の山に手を伸ばしかけたその時だった。

「やぁ、綱吉」

声と共に窓が開く。
ちょっと待てここは二階だ、なんて思ったがこの人に世間一般の常識は通用しない。
ペンを動かしていた手を止め、顔を上げる。
いつもの笑顔で

「あ、お久しぶりです。雲雀さん」

と言えば、何が雲雀の癇に障ったのかは分からないが途端に嫌な顔をした。
ファミリーの財源の管理――というよりも金庫番――と守護者最強といわしめた雲雀は未だにこうして時々窓から入って来る。
ドンになり読心術を学んでも何故なのかは全く分からない。

また、ドンになり立場的には綱吉の上になるものは居ないのだが中学時代の名残なのか雲雀と笹川はさん付けで呼ぶ。
逆に言えば雲雀と笹川以外は皆下の名前を呼び捨てだ。
雲雀から言えばそれが不満らしいが、それに綱吉が気が付く訳も無い。

「はい、これ。後は綱吉の印を貰うだけになってるから」
「流石ですね、雲雀さん。毎度の事ながら仕事が早い」
「ふん、僕を誰だと思ってるの」
「でしたよね…」

思わず溜息をつく。
綱吉にとってまだ雲雀は恐れるべき存在だった。
いや、それは正しくないだろう。
怖いが頼りになる。しかし、何かと問題をもってくる食えないやっかいさん。
それが本心だった。
こんなこと、文字通り口が裂けても言えやしないが。

だが、綱吉の周りに何かと問題をもってくるやっかいさんは沢山いる。
例えば六道骸。
例えばビアンキ。
例えば獄寺隼人。
指折り数え始めたら止まらない。
だが綱吉自身、自分が相当食えない奴になっていることに気付いてはいない。

雲雀はおもむろに部屋にでんと置かれているソファーにまるで我が物のように腰掛けた。言っておくが、此処は綱吉の部屋である。
しかしこの程度で何か問題に思うほど特殊な事ではない。いつもの事、である。


「雲雀さん、俺も一段落ついた所ですし、お茶飲みませんか?」
「そうだね。僕も時間は空いてるよ」
「丁度二個ケーキもあるんですよ。この前食べて美味しかったのがあって買ってきたんですよ。
俺用意しますから雲雀さんは待ってて下さい」

あのケーキに合う紅茶はどれだろうか。そもそも紅茶の入っている棚は何処だっただろうか。
席を立つとやんわりと雲雀に止められた。

「いいよ。僕がやる」
「いや、大丈夫ですって。俺やりますから」
「いいの。僕がやりたいだけだから。何?それとも僕の言うことが聞けないっての?」

眼光鋭くこちらを見てくるものだから、綱吉は雲雀の言う通りにしない訳にいかず、再び椅子に座った。

「い、いえいえそんな滅相もない。じゃあお任せしますね」

そう言うと雲雀はソファーから立ち上がり、いきなり部屋を出た。
簡易的とはいえキッチンは部屋に備え付けてある。つまり、ケーキもその部屋の冷蔵庫の中である。
はて、一体彼はどこに行ったのだろうか、俺は彼に何かして怒ってでていってしまっただろうか。
だが部屋にいるとき彼は終始ご機嫌な雰囲気だったではないか。だが分からない。
彼ならいきなり怒ることもよくある。
そんな考えをしていれば、程なくして彼は戻って来た。手には既に煎れてある一杯の紅茶の乗った盆を持って。

「はい、これ。ケーキは良いから取り合えず飲んでみてよ。安心して。僕が煎れたのだから毒は入ってないよ」
「てか毒とかそんな冗談言ってる場合ではなく。あの雲雀さん。ケーキと紅茶は」

セットでは無いんですか。と言いかけた口が止まる。
雲雀と目が合ったからである。
何でも良いから取り合えず飲め。と言った所だろうか。
雲雀に勧められた紅茶は…美味しかった。
が、幾分問題点があった。
甘すぎるのである。この甘さは一個や二個、角砂糖を入れたなんてレベルではない。
現に、底には溶けきらなかった砂糖があり、飲む度にじゃりじゃりしてむせ返る様な甘さだ。

こんなもの、一杯――しかもなみなみと――全部飲みきれない。
しかしせっかく雲雀が煎れてくれた紅茶だ。飲みきらない訳にはいかなかった。
だが雲雀とて、料理が出来ない男ではない。寧ろ日本食に限ればプロ並の腕前と言っても過言ではない。日本食でないにしても、普通の料理も並より上だ。
その雲雀がこんなに甘い紅茶を煎れるのだ。つまり、これは「わざと」に他ならなかった。
ひっ、と咽の奥が引き攣るような声を抑え、キッチンに走り、水を飲む衝動を抑えながら

「雲雀さん、俺何かしましたか。ほんとに謝りますから何が悪かったのか教えて下さい」

と言えば、雲雀は口元を少し引き上げてくすくすと笑った。

「そんなに困った顔をするんじゃないよ。それに別に謝られたいからこれを煎れた訳ではないよ。
聞けば君は一週間程ここにずっといるじゃないか。
どうせ綱吉の事だからろくに飲まず食わず何だろ?疲れた時には甘いものが一番だ」

そうだった。綱吉は一度やると決めたことは何があっても途中で投げ出さない男――過去一度だけ例外もあったが、それはまた別の話――だった。
それはボスとしての鏡のようであるが、彼の場合はやり過ぎなのだ。それこそ飲まず食わず一睡もしないなんてのはざらだ。
ずっとこんなことを繰り返していればいつか体を壊すというもの。

今回、ある程度は食事をとっていたらしいがそれでも体は疲れている。
この砂糖多量入り紅茶は雲雀なりの優しさらしかったが、いかんせん分かりにく過ぎる。

「えと…有難うございます…?」
「どう致しまして。きっとこれで疲れが取れたんじゃないかい。さ、もう一度煎れ直してケーキを食べよう」

ふふん、と雲雀が笑えば、部屋の雰囲気がほんの少しだけなごやなになった気がした。

「そうですね。今度こそ俺がやりますから」
「ああ、頼むよ」

雲雀はソファーに座り、綱吉は立ち上がりキッチンに向かう。
そんな、午後のつかの間の平和な一時。








ミルクとレモンはどうしますか?


(ミルク少なめでレモンはいらないから)
(はーい、分かりました)








+++++++++++++++++++++++

書きはじめ、こんな話になる予定では無かった。
骸も出てくるはずだったのに、存在を消された(笑)


というか、雲雀と綱吉以外出て来て無い件。
でも、ケーキ食べ終わった頃に獄寺とか山本とかが新たなケーキ持って執務室に来て綱吉は更にケーキを食べる羽目に。




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