今日から始まる 土千




漸く長い長いテストが終わった。テストはやった分だけ顕著に点数に現れるから返ってくるのが楽しみなような、そうでないようななんとも複雑な気分だ。
だが、気分に関係なく返ってくるのがテストと言うもの。

何はともあれ、勉強浸けの数週間から解放されて何も考えずにゆっくりと出来る時間が久しぶりに訪れたのだ。


「本当に……疲れました」
「あぁ、テストお疲れさん」
「だって古典のテスト、凄く難しかったですよ!?」
「そんなこと言ってもなぁ。しょうがねぇだろ。簡単な問題作っちまったらみんながみんな百点なんだからよ」
「まぁそれもそうですけど……」

土方の車の中でぐったりとしながら、未だ文句は言い足りないと言うように千鶴は頬を膨らませる。
一方土方は表情こそ変わらないが、そんな千鶴を見て目元を緩ませていた。
そこに流れるのはどことなく甘い空気。

「そうだ千鶴。お前何か欲しいものあるか?」
「……どうしてですか?」

千鶴は眉を潜め、いぶかしげな表情をする。

「テスト終了祝いだ。今すぐにとは言わないが、まぁ何か考えてろよ」
「はぁ……」

千鶴の煮え切らない返事にたいしたことは無いと言うように、土方は続けた。

「さて。
サろそろ飯食いに行くか。……何か食べたいもんはあるか?」
「いえ、何でも良いですよ」
「そうか?じゃ前から行きたいと思ってたところで良いか」

ちょっと予約してくるからまってろと、千鶴がプレゼントしたキーホルダーを付けた携帯を携えて土方は車から降りた。


外にいる土方をぼーっと見ながら相変わらず土方さんはかっこいいよなぁ……と改めて千鶴は再確認する。

目を閉じても直ぐに思い浮かべられるあの顔。
紫がかった瞳、整った目鼻。軽く顔にかかるさらさらとした髪。
そして、柔らかい唇。
彼を成すパーツの全てが美しい。それはまるで神が作ったもののように。
そんなに俺の顔をまじまじと見てなんか付いてるのかと土方に言われたのは一度や二度ではない。

欲しいもの……かぁ……。
先程は無いかもしれない、と思っていたが、実はそうでもないしれない。
最近一緒にいられなかったからなぁ……。やっぱり一緒にいたい。あとは……何かあるだろうか。
そうだ、身につけられる何かが欲しい……。


と言うのも千鶴と土方は互いの立場を考え危ないことはしない主義である。千鶴は土方が自分のことを考えて学校では不用意なことをしないことを知っている。
土方
ェ自分のことを思ってそのような行動をしているのだから、自分からそれと気取られることをするわけにはいかない。もしそれをしてしまえば土方の努力を無にするのだ。
だから今までそれを口にするのは避けてきた。しかし欲しいものはそれだった。


うー。難しいなぁ……。自分の欲しいものは彼の為にならない。
けれどまぁ、彼と一緒にいられることが一番だ。さしあたってこの週末、一緒にいられるだろうか?

千鶴は遠のきつつある意識の中でそんなことを思いつつも、しばらくの勉強疲れには勝つことが出来ず、シートに身体を預けた。



*



「千鶴、千鶴着いたぞ」
「土方……さん……?」

土方の己を呼ぶ声で千鶴は目が覚める。まだぼんやりとした頭だったが、徐々に冴えてくる。
どうやら、土方の車の中で寝てしまったようである。

「すまんな、もう少し寝かせてやりたかったんだが、もう予約の時間なんだ」
「あ、寝ちゃったみたいですみません……」
「ほら、行くぞ」

土方に手を引かれ車を降りる。
選んだ店は洒落たフレンチレストラン。
千鶴と土方はテスト前に会えず話せなかったのを補うかのように話続けたが、ついに話が止まることはなかったのだった。
千鶴が楽
しそうに話すのを口をあまり挟まないながらも楽しそうに聞いている土方。


「なぁ、千鶴……」

デザートが出て来たため、コースももう終わりのようだった。
土方がぽつりと出した声には重みがあり、話していた千鶴の口も自然と止まる。
少し暗めの照明が雰囲気をつくる。すなわちそれは甘いのを越えた甘ったるいもの。
流石に千鶴もそれには気が付かない訳が無いようで。

「土方さんどうしたんですか……?」

聞く声は自然と抑えられた。

「なぁ、俺はさっきお前に何が欲しいと言ったよな。お前は何も答えなかったから何時でも良いと言ったが、お前はこれを受けとってくれるか……?」

土方はおもむろに小箱を取り出す。そして千鶴に差し出した。

「土方さん、これ……」
「あぁ、これが俺の気持ちだ」

土方が取り出した小箱の中にあるそれは、千鶴が土方のことを思って言い出せないが欲しいと願ったもの。間違いなく指輪であった。驚いてしまい思わず口が開いてしまう。

「私なんかで……、良いんですか……?」
「お前なんか、じゃない。お前だから、だ」

嬉しさと驚きがないまぜになって、涙がこぼれ落ちる。
だから受けとってくれるか、と土方は少し緊張ぎみに続けた。

「土方さん……。今付けてみても良いですか?」

高揚しぎみに震える指で千鶴は指輪を付けた。その光景を見て、土方は満足そうに微笑む。

「これが、わたしの答えです」

千鶴は土方になおも震える手を差し出して答えたのだった。その左手の薬指には銀色のリングを付けて。







_______________
甘さ六割増だよ!!
のはずが。
あ、れ……甘くない……だと?
一応砂糖(と言う名の砂)をどばどば入れたはずなのに、どこで調理法を間違えたのかしら……。
そんな感じですが、一応二割増です(当サイト比)


作中で千鶴は土方のことを土方さん呼びしてますが、歳三さんに変わるのは多分結婚してからとか、婚約してからだと思います。
そこは何となく本編と似てるような気がします。
まぁ、妄想の中の話ですが。

SSL設定の土千でしたがもの凄く楽しんで書けました。ただの土千も好きだけどSSL設定美味しくて好きです。本編にはない甘さが魅力だと思います。

テストがちょいちょい絡んでくる話でしたが、管理人はテスト直前終わったばかりですよ(^ω^)
返って来てしまうのか……(遠い目)


という訳でした。
逢い詩のよいづきさまに捧げます。
あ、お気に召しませんでしたら返品とかも全然構わないので……。





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