遠く 真珠(過去拍手)
「待って下さい」
それじゃあまたな、と背を向けたこの人の手を咄嗟に握った。 このまま手を離せばどこかに行ってしまいそうだ、と唐突に感じたからだ。 分かれてしまえば、「また」なんかないような気がして。
不可視真っ黒だけど、の翼は今も確かに背中にあって。 羽ばたく準備は、出来てる。 さん、に、いち、の号令をかける必要もないのだ。
あなたはどこに行こうとしているの? この翼の羽をなくしてしまえば、どこにも羽ばたけなくなる?離れられなくなる?
この人にとってこの手を放して私から離れることは、さよならの挨拶すらもしないくらいのことだろう。 世界を救う玉依姫だなんて言うけど、目の前にいる人の次の瞬間の行動すら分からない。 何を望んでいて、何をしたいのかも分からない。なんて、小さな存在。
繋ぎとめておかないと、その背中に生えてる翼で飛んでいっちゃいそうで。 この手を放せない。 どこにも行かないで下さい。 わたしが、あなたを縛り付ける鎖になりたいの。
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