amn/しょうがないでしょ トマ主


※グッドエンドの後なのになんかしょっぱい

 震えるあいつの肩を掴んだ。それは寒さからくるものか恐怖からからくるものか――今は間違いなく後者だろう。
 抱きしめようと身体に触れれば、マイは怯えるようにびくりとした。それが、自分のしてきたことの結果であり、どうしようもなく自分に嫌気がさす。

 こんな風にしたくてあんなことをしたんじゃ無かったのに。ただ笑って欲しくて護ってたはずなのに、どうしてこうなってしまったんだろう。
 だけど、マイのしょうがないなって笑った顔は昔と全く変わってなくて。
 俺のことが怖いだろうに、手をのばす。腕を掴んで抱きしめた。どうしようもなく暖かくて。涙が、溢れるんだ。
 お前はこんな俺に、まだ手を伸ばしてくれるんだね。救ってくれようとするんだな。

*

 一度マイとしっかり話をしなくちゃと思っていた。今後のことについて。多分、はぐらかし続ければもう一生このことに触れずに生きていくことが出来るだろう。
だけど。
「俺は……どうすれば良い? どうすればお前にしてきたことを償える?」
 そう言う俺を見るマイの目は怒っているようにも、困っているようにも見えた。感情が読めない。
 いつからお前はそんな顔をするようになったんだろう。昔はお前のことならどんなことでも分かったって言うのに。
「……トーマがそんなことを言うとは思って無かったよ」
 じゃあお前はどう言うと思ってたの、なんて聞けなかった。
 視線も声も。空気さえ冷たい。でも俺は、こうなって当然のことをしたのだ。
「償うなんてトーマは勝手だね。一人で罪を背負った気になって、それで終わらせようとしてるの? 罪を背負えばそれで良いと思ってるの?」
「……どうすれば良いのか分からないんだ。俺は、お前の言う通りにする。もう目の前に現れるなって言うなら俺はそうするよ」
 マイの言葉は俺のやわいところを狙ってつつくようで、胸が痛む。
 あぁ、痛む心なんて無かったはずなのに、可笑しいな。
 ねぇ、とアクアマリンの瞳が俺に問う。
「トーマは罰を与えてもらってそれで満足なの?」
「俺は、自分のことが許せないよ。お前を守るためだと言って、結局お前を傷つけてしまっていた」
「……そうだね。確かにトーマのしたことは、許されることじゃ、ないよね。きっとトーマの方が詳しいと思うけど、これは法に触れても可笑しくないことだよね。トーマも苦しかったのかも知れないけど、私もあの何日かは、凄く、苦しかったよ」
「……ああ」
「でもね、苦しいのに心のどこかでトーマといられて嬉しかったって、感じちゃう私もいるの。それって可笑しいよね」
 普通に考えたら、可笑しいことだよね。気持ち悪い。
 そう言うとマイはゆっくりと目を閉じた。綺麗な瞳が見えなくなる。何を、思い出しているのか。
 あの数日間のこと?だとしたら檻からの風景?一緒に買い物に行ったときのこと?それとも――幼いころのこと?
 俺には分からない。
「きっと忘れられない。だから、トーマを見ると思い出すんだよ。あの時あんなことされたなぁって。でもね、もうどうしようもないでしょう? おわったことだから」
 そう言って俺を見るマイは泣きそうで。抱きしめてやりたいなって思ったけれど、俺にはそんな資格はない。抱き締めるどころか、触れることだって、下手したらこうして話す資格すたないと言われてもおかしくない。
「どんなに怖くても、辛くても、トーマが好きだから、どうしようもないの。人間ってね、不思議なもので嫌いって感情が二十あっても、好きって気持ちが八十あれば、好きが六十って程単純じゃないけど、気持ちは好きに傾いちゃうの。
だから多分、これから先もトーマにはどんな酷いことをされても私は赦しちゃうんだよ。だから良いよ、トーマ。世界中のみんなが赦さなくても、私はトーマを赦すよ」
 それでいいでしょ?と目の前にいる彼女は言う。
 自分のしてしまったことを赦してくれるからとかそういう次元ではなく、自分には彼女しかいないんだなと思った。
 こんなに小さいのに、どこまで背負うのだろう。俺が重くて捨てたものを、いとも簡単に背負ってしまった。あぁ、敵わないな。俺にはこいつしかいない。こいつじゃないと、駄目なんだ。
「ねぇ、だからトーマは一生かけて私に誓って。私のために生きるって」








120308



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